時事ニュースの攻略法

池上彰さんに聞く、時事ニュースを学ぶヒント 信頼できる情報源で歴史や背景を調べよう

2021.11.18

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斉藤 純江
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時事ニュースの知識を深めるにはどうすればいいのでしょう。ジャーナリストで東京工業大特命教授の池上彰さんに学び方のヒントを聞きました。

新型コロナとどうつきあっていくかの年

2020年は日本も世界も、新型コロナウイルスの感染者が増え、新型コロナに翻弄された1年でした。21年はワクチンの接種が進み、ようやく、新型コロナとどうつきあっていくかが見えてきました。

新型コロナウイルスのワクチンがこんなに早くつくれたのは、メッセンジャーRNA(mRNA)を使ったからです。従来の「不活化ワクチン」が感染性をなくしたウイルスやその一部であるたんぱく質を使うのに対し、mRNAワクチンはたんぱく質をつくるもとになる遺伝情報の一部を投与します。mRNAは人工的につくれるので大量生産が可能で、これまで10年かかるとされていた完成までの期間が大幅に短縮されました。mRNAに関する問題は、21年1月の大学入学共通テストでも、生物で出題されています。

「インフォデミック」という言葉も話題になりました。真偽不明や虚偽の情報が大量に拡散されてしまう状況のことです。ワクチンを接種すると不妊になる、マイクロチップが入っていて人々をコントロールしようとしているなど、根拠のない情報が乱れ飛び、ワクチン反対運動まで起きました。

このようなフェイク情報に引っかからないためには、いろいろなところから幅広く情報を集めることが大切です。インターネットで「ワクチン 危険」というキーワードで検索すると、ワクチンが危険だという情報が山のように出てきます。それを見て、「自分は正しい。これが真実だ」と思ってしまう人もいます。でも、そこでちょっと立ち止まり、「ワクチン危険は噓」などのキーワードで検索してみると、これもまた、山のように情報が出てきます。異なる意見を読んでみることで、「ワクチンが危険だというのは本当かな」と疑うことができます。

調べ学習でもそうですが、インターネットで情報を得るときは、出典はどこか、信頼できる情報源かどうかをしっかり確認することが重要です。専門機関がインターネットで公表している情報を使うのもいいと思います。書物や新聞、テレビなどの情報は何人もの人が事実関係を確認して発信しますが、インターネットで個人が配信する情報は、とんでもない内容であっても、事実関係が確認されないまま拡散されてしまうことがあります。インターネットの情報には、そのような危険があるということを知っておく必要があります。

世界であった大きな変化

世界中で大きな変化があった年でもありました。ヨーロッパでは、ドイツのメルケル首相が引退します。メルケルさんはコミュニケーション能力が高く、国民の支持を集めていました。それは、新型コロナウイルスの感染対策について、20年3月に行ったテレビ演説からもわかります。メルケルさんは感染拡大を防ぐため、移動の自由がなくなり、学校が閉鎖されている現状に触れ、「連邦と各州が合意した休業措置が、私たちの生活や民主主義に対する認識にとり、いかに重大な介入であるかを承知しています」と述べました。さらに、そのような制約は「絶対的な必要性がなければ正当化し得ないもの」だけれども、「いまは命を救うために避けられない」と訴え、国民に理解を求めました。

この演説は、民主主義とは何なのかを教えてくれます。私が試験問題をつくるなら、この演説を題材にして、演説の意味するところや、何がくみ取れるかを問いたいですね。在日ドイツ大使館のウェブサイトに日本語訳が載っているので、ぜひ読んでみてください。

ドイツのメルケル首相
ドイツのメルケル首相

イギリスでは今年、人手不足が物流網を直撃しました。原因は昨年の欧州連合(EU)離脱です。離脱の一つのきっかけは、東ヨーロッパから大勢の外国人労働者が入ってきて、イギリスの労働者の仕事が奪われたり、給料が低く抑えられたりしてきたことでした。しかし、外国人労働者たちが引き揚げた結果、イギリスでは流通網が大混乱し、ガソリン不足で給油所に長蛇の列ができています。ガソリンはあるのに給油所まで運ぶ運転手がいないのです。野菜や果物などを運ぶトラック運転手も不足しています。介護労働者にも移民が多かったので、やはり人手不足で困ったことになっています。庶民レベルでは、「EU離脱は失敗だった」と思われているのが現状でしょう。

翻ってみて、日本はどうでしょう。日本も労働力が不足し、製造業やサービス業、宿泊・飲食業などはすでに外国人の力が欠かせなくなっています。その人たちがいなくなったら、日本はやっていけるのでしょうか。イギリスのEU離脱とその後の混乱は、日本にとってもひとごとではありません。日本は移民を受け入れるのか否か、自分たちの問題として考えてみてほしいと思います。

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