わが子を算数・数学嫌いにさせない習慣

平面的なゲームが全盛の時代、「サイコロキャラメル」で空間的に遊ぼう

2021.12.10

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。パターン化した入試対策の影響か、受験生はそんな「暗記数学」のわなに陥りがちです。人工知能(AI)が急速に普及するなか、今後求められる算数・数学の力とはどんなものでしょうか。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の面白さを教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、「AI時代に必要な数学力」を説きます。(タイトル画:吉野紗月)

立方体の展開図は何種類?

現在は、テレビゲームやスマホゲームなどの平面的なゲームが全盛の時代です。しかし私が小学生だった1960年代は、積み木、プラモデル、あやとり、折り紙などの空間的な遊びが主であったのです。忘れられない思い出の一つに、サイコロキャラメルを使った遊びがありました。1927年に誕生したサイコロキャラメルは、現在でも北海道の会社で生産されています。サイコロキャラメルを「単なるお菓子ではないか」と済ませるのではなく、算数・数学の学びに生かす方法を紹介しましょう。

まず、空間図形は平面図形と比べて扱いが難しいからこそ、扱いやすい展開図や投影図などの平面図形として考えていることに注意します。実際、サイコロキャラメルの形をした立方体の展開図は11種類あり、いろいろと試行錯誤しながら11種類を各自で見つけることが大切です。試行錯誤を重ねて問題を解決する糸口を見つけだすことが、新しいものを生み出すことにつながるのです。キャラメルを食べた後の空き箱を切ったりしながら、展開図をいろいろ作ってみると面白いでしょう(図1「サイコロキャラメルの展開図」はこちらから)。

次に、確率の学びで最も大切な内容は「同様に確か」という言葉の意味です。この言葉をたとえばサイコロで説明すると、サイコロを投げるとき、1から6のそれぞれの目の出方は同じ可能性があると考えてよいことです。だからこそ、それぞれの目の出方は「同様に確か」となって、確率は 
1

/6
 になるのです。

偶数の目が出る確率は、2と4と6の目が出る確率それぞれを足して、

1

/6
+
1

/6
+
1

/6
=
1

/2

となって、答えは 
1

/2
 になります。3の倍数の目が出る確率は、3と6の目が出る確率それぞれを足して、

1

/6
+
1

/6
=
1

/3

となって、答えは 
1

/3
 になります。

私の小学生時代は、サイコロキャラメルの空き箱を使った双六(すごろく)遊びをよく行いました。そのような遊びによって、サイコロの各目は「同様に確か」ということを学んだと思い出します。ところが最近の子どもたちの中には、双六遊びなどでサイコロを実際に投げることをあまり行わなくなって、サイコロはテレビゲームやスマホゲームの画面の中で、転がって出てくるものと勘違いしている人たちがいます。これは、残念でなりません。実際に手を動かして遊ぶことの意義を再確認したいものです。

サイコロを手にして遊ばなくなると、簡単に理解できることに気づかなくなってしまうのではないか、と心配になる、ある試験結果があります。その問題を紹介するので、各自、考えてみてください。見取り図も示した立方体の問題で、問題文は少し変更しています。

【問題】
2010年の全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)で、中学3年用の数学の問題から。図2(こちらから)のように、立方体の2つの面の上に引いた2本の対角線の長さを比べるとき、「上の対角線が横の対角線より長い」「横の対角線が上の対角線より長い」「同じ」「どちらとも言えない」の4つから適当なものを選びなさい。

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