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すごくてやばい偉人たちの「ギャップ」 歴史を学ぶ醍醐味、本郷和人さんに聞く

2021.12.09

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佐々木 正孝
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源頼朝はニートから復活して鎌倉幕府を開いた、葛飾北斎は家がゴミ屋敷でも天才絵師として活躍した――。教科書に載る偉人たちの「すごい」面と「やばい」面を並べて紹介する『東大教授がおしえる やばい日本史』シリーズ。こうした偉人の二面性は歴史好きな子なら興味を掘り下げられ、苦手な子も好きになるきっかけになるかもしれません。監修を担当した歴史学者の本郷和人さんに、歴史上の人物のギャップを知るコツと醍醐味について聞きました。

Kazuto_Hongo

話を聞いた人

本郷 和人さん

東京大学史料編纂所教授

(ほんごう・かずと)東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得。博士(文学)。専門は中世史、古文書学。NHK大河ドラマ『平清盛』(2012年)など、ドラマやアニメ、漫画の時代考証にも携わる。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『東大教授がおしえる さらに! やばい日本史』(以上、ダイヤモンド社)、『日本史のツボ』(文藝春秋)など。

歴史上の偉人は「すごくてやばい」から面白い!

――『東大教授がおしえる やばい日本史』、その続編の『さらに! やばい日本史』は、子どもだけではなく保護者世代にも読まれているそうですね。

子どもたちの旺盛な知識欲を満たすにはどうしたらいいか。そんな問題意識から出来上がった本ですが、大人にも面白がってもらえたことはうれしいですね。この本が親子の会話のフックになったらいいと思っています。

というのも、子どもは一人で勉強するよりも、家族と触れ合いながら学ぶのがいいのではないか、と考えているから。オープンな学習環境で、偉人たちの「すごい」「やばい」ネタで盛り上がったら、歴史への興味がより一層湧くかもしれませんから。

――歴史上の人物のすごい面とやばい面が並列に紹介されている同シリーズ。やばい点にも注目したのはなぜでしょうか?

教科書では歴史上の人物の「すごい」面だけが記載されがちですが、彼らは決して完璧な人間ではありません。私たちと同じように失敗や間違いをたくさんし、喜び、悲しみ、笑い、泣いて過ごしてきました。そんな、どこかに「やばさ」を持った自分たちと同じ人間が歴史を作ってきた。そう考えると歴史を身近に感じられ、「私もすごいことができるんじゃない!?」と思えるかもしれない。そんな思いからやばい面にも着目しました。

江戸・明治・大正の3つの時代を生きた大隈重信は、「明治維新の立役者となった西郷隆盛、大久保利通は英雄と言われるけれど、彼らも『一人の生きた人間』であった。長所もあるけれど、短所だってあった」という意味のことを言っています。すごい面もあれば、やばい面もある。だからこそ人も歴史も、面白い。

――本郷先生自身は、どんな偉人のやばい面に惹かれましたか?

私は幼い頃、体が弱かったんですよ。だから、左手が不自由というハンディを乗り越えて細菌学者になった野口英世がヒーローでした。「彼のようになろう」と医者を志したこともありましたが、解剖が苦手だったので諦めました。後年になって野口英世は夜遊びが大好きで、ほうぼうに借金をしては踏み倒すなど、私生活ではろくなエピソードがないというやばい面を知るのですが……。ああ、私のヒーローも一人の人間だったんだなあ、と知った時はニヤニヤしましたね。

ただ、彼の母親が英世に書いた手紙などを読むと涙を誘うものがあります。病気の研究に命を捧げたけど、生活面ではろくでもなかった。だけど、家族との情愛は感じられる。すごくてやばい日本史を語る上では、典型の偉人と言えるでしょう。

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