2025大学入試どうなる

「企業のDXを進めるにも『情報』の基礎知識が全員に必要」東京通信大・筧捷彦教授

2021.12.10

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佐藤 剛志
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2022年春に入学する高校生から、新しい科目「情報Ⅰ」が始まります。生徒たちが高校3年生で受験する25年1月実施予定の大学入学共通テストからは、試験科目に「情報」が加わります。今年3月には、文部科学省が検定を終えた情報Ⅰの教科書を、大学入試センターが共通テストの情報のサンプル問題を、それぞれ公表しました。新たに始まる情報Ⅰとはどのような科目で、これまでの情報科の科目と何が違うのでしょうか。高校での情報科教育に詳しい東京通信大の筧捷彦教授に聞きました。(写真は、文科省が公表した情報Ⅰの教科書)

筧捷彦

話を聞いた人

筧 捷彦さん

東京通信大学情報マネジメント学部教授

(かけひ・かつひこ)専門は計算基盤、情報学。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、立教大学助教授や早稲田大学教授などを経て、2020年4月から現職。情報処理学会情報入試委員会委員長、情報オリンピック日本委員会理事長、情報科学国際交流財団理事長、早稲田大学名誉教授。

学ぶべき内容がようやく一本化

――高校での情報科教育はどのような形で始まったのでしょうか。

2003年度実施の学習指導要領で高校に教科「情報」が新設された際には、「明治以来の新しい教科が設置される」として注目されました。それまで商業科とか工業科などの専門学科の一部には情報系の科目があったのですが、普通科などにはなかったのです。それを作ろうということになって、03年度に必履修教科として情報科ができました。

これにあわせて情報科を教えるための教員養成が始まるわけですが、人数が足りません。00年から02年にかけては、既に数学や理科などほかの教科の教員免許を持つ先生が15日間の特別講習会を受ければ免許を受けられる措置もとられました。

1学年分の2単位科目ですし、必ず1年次に教えなければいけない制約もありませんから、各高校では情報の免許を持たない先生が教える「免許外教科担任」という方法で対応した例も少なくありませんでした。

その後、着実に新しい教員が育っていったのに必ずしも採用に結びつかなかったのは、情報科が「大学入試に関わらない科目」であることが大きく影響しています。06年に情報科の未履修問題が起きた背景にも、やはり入試には使わない科目だからという事情も影響していたと考えられます。情報科は現在も免許外教科担任や非常勤の先生が教えている場合が少なくないですが、今後はこういった状況が変わっていってくれればと思っています。

――03年度に始まった情報科と現在の情報科の科目、新たに始まる「情報Ⅰ」はどう違うのですか。

03年度に高校で情報科を教えるにあたり、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の三つが柱とされました。

具体的な科目設計をどうするかとなった際、3本の柱をそれぞれ学習してもらいたいけれども、最初は高校で教える先生方も大変だろうと、三つのどれを中心にして科目の中身を組み立てるかによって、「情報A(情報活用の実践力)」「情報B(情報の科学的な理解)」「情報C(情報社会に参画する態度)」という3科目を置いて、どれを学ぶかは生徒に選択させようという考えだったんですね。

ただ、実際には情報Aを選択する高校が圧倒的に多くなりました。学校現場の実情としては、もともと他教科の担当だった教員が多いなかで、とてもプログラムとかコンピューターに踏み込んだ内容までは教えられないよ、というのが本音だったと思います。情報機器の活用であればパソコンを使わせてワード、エクセル、パワーポイントを教えればいいのだろうという雰囲気で圧倒的に情報Aを選ぶ学校が多かったのです。

三つの科目ができて選択必履修となったので、通常なら大学入試に、当時であれば大学入試センター試験の出題科目に入れようという議論が当然行われました。ですが、情報機器の活用を学ぶ情報Aを選択する学校が圧倒的に多いなかで、センター試験のペーパーテストにはなじまないので当面は見送ろうという流れになった経緯があります。それがその後も長く続くことになってしまいます。

必履修科目なのに中身が薄い状況を何とか変えようという動きや、中学校の技術科でコンピューターを使う単元が入ったこともあって、13年度実施の学習指導要領では、少なくとも情報機器の活用を主体にする科目はもういらないということになりました。そうしてできたのが、現在高校で選択必履修科目となっている「情報の科学」と「社会と情報」の二つの科目です。それでも、「文系的な内容」だと受け止められた社会と情報を教える学校が圧倒的に多い状況となって、情報についてもっとバランスよく教える科目が必要だということになりました。

13年には政府が「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定し、20年をめどに日本は世界最先端のIT国家になる、教育も変えなければならないとしたんですね。小学校からプログラミングを含む情報教育を行うと、うたったんです。実際に小学校では20年から全員がプログラミングを含む情報教育を受けるようになり、高校でも来年22年から新たな科目「情報Ⅰ」の授業が始まるわけです。

情報Ⅰでは、情報の科学、社会と情報で扱っていた内容に加え、プログラミングや情報デザインに関する内容も充実させます。社会と情報、情報の科学に分かれていた段階から情報Ⅰに一本化されることで、やっと全ての生徒が一つにまとまった形で情報を学べることになります。高校と大学が情報交換して、どうしたらより良い教育ができるか探っていってほしいです。これから先、どうしてもいろいろな不具合が出てくるでしょうが、高校側も大学側も、そして社会の側も、過度に振り回されないでほしいですね。仮に「情報の教育なんていらないんだ」と社会で広く受け止められているならば、話は別ですが……。新しいものを始めるときにはどうしても不具合は出てくるもので、課題が明らかになったならその都度修正していけばいいと思います。

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