フツーじゃない普通科

普通科改革最前線! 島根県立隠岐島前高校の「地域共創科」とは?

2021.12.23

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笹原 風花
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文部科学省では「普通科改革」を推進しており、2022年度から「普通科」以外の名称で、普通教育を行う新しい学科を設置できるようになります。全国に数校ある初年度設置校の一つが、島根県立隠岐島前(おきどうぜん)高校。十数年前に廃校の危機を迎えたものの、全国から生徒を募集する「島留学」など地域と共に魅力ある学校づくりに努め、高校魅力化の最先端をいく学校として注目を集めてきました。新学科「地域共創科」設置の背景や特色について、同校の関係者に聞きました。(写真は、地域の人や大人に向けて自身の3年間の学びについて発表する高校生たち=隠岐島前教育魅力化プロジェクト提供)

大野佳祐

話を聞いた人

大野佳祐さん

島根県立隠岐島前高校 学校経営補佐官

(おおの・けいすけ)東京都出身。私立大学職員を経て、隠岐島前高校のある島根県海士(あま)町へ移住。学校経営補佐官として隠岐島前高校の学校経営に携わるほか、海士町のふるさと納税事業など地域づくりにも広く携わる。

大賀学

話を聞いた人

大賀学さん

島根県立隠岐島前高校 主幹教諭

(おおか・まなぶ)島根県出身。島根県立高校、島根県教育委員会などを経て、2021年4月に隠岐島前高校へ。主幹教諭として「地域連携」「教科横断」をテーマにした授業づくりに挑戦している。

宮野準也

話を聞いた人

宮野準也さん

島根県立隠岐島前高校 コーディネーター

(みやの・じゅんや)静岡県出身。民間企業勤務を経て、隠岐島前地域へ移住。隠岐島前教育魅力化プロジェクトメンバー(隠岐國学習センタースタッフ)、島根県知夫(ちぶ)村教育魅力化コーディネーターなどを務めたのち、2021年度から現職。隠岐島前教育魅力化プロジェクトリーダーも務める。

仲間と、大人と、地域と、共に創る学科

――「地域共創科」とは、どのような学科なのでしょうか?

大野:生徒が地域に深く入って実践的・探究的な学びを展開する学科です。生徒がただ学ぶのではなく、「仲間と共に、大人と共に、地域と共に、意志ある未来を創る」というキャッチフレーズのもと、「共に創る」というところに重きを置いています。地域探究には「学校が生徒の学びのために地域を活用する」という側面が少なからずあると思いますが、地域共創科では「地域に学校・生徒を活用してもらう」というフェーズまで行きたいと思っています。

島根県立隠岐島前高校がある、隠岐島前地域=隠岐島前教育魅力化プロジェクト提供
島根県立隠岐島前高校がある、隠岐島前地域=隠岐島前教育魅力化プロジェクト提供

――地域と結びついた探究型の学びを実践してきた隠岐島前高校が、新たに「地域共創科」を設置する背景をお聞かせください。

大野:世の中ではいわゆる学力に加えて、探究力、協働力、主体性といったものがより求められるようになるなか、学校だけで閉じてしまうのはもったいない。そう考えて、これまでも普通科の枠組みのなかで地域探究を行ってきましたが、地域に入っていく、地域と一緒に創っていくという点においてもっとできるのではないかという気持ちがありました。また、物理的に時間数が少ないという課題もありました。地域探究に充てられる授業時間数は、高校1年生で週1コマ、2年生で週1〜2コマ、3年生になると多い生徒で週3コマです。そうなると、例えば、知夫村という島前地域内の島で畜産農家の人に話を聞きたい、畜産を体験したいとなっても、船での往復を考えると授業時間内では難しく、放課後や週末を使わざるを得ません。地域探究が課外活動になってしまうことで、生徒のなかで探究と教科のひもづけが弱くなってしまうことも課題と感じていました。地域にもっとズブズブと入って、地域にどっぷりつかって学ぶ学科を……ということで設計したのが、「地域共創科」です。

3年次には最大12コマが探究的な学びに

――「地域共創科」は従来の「普通科」とどう違うのでしょうか?

大野:普通科であっても地域共創科であっても、隠岐島前高校が目指すのは「グローカル人材」、つまり、グローバルとローカルに代表される異なる価値観を往還しながら思考・行動し、未来を創っていける人材の育成です。高校生活を通して、「主体性」「協働性」「探究性」「社会性」の四つの資質・能力を伸ばそうとしている点も同じです。言ってみれば、目指すゴールは同じだけど、そこまでの登り方が違う、ということです。そのため、最初の1年間は全員が普通科で学び、2年次に普通科1クラス、地域共創科1クラスに分かれます。

大賀:普通科とのカリキュラム上の大きな違いは、学校設定科目の時数です。2年次に「地域未来共創」が、3年次に「グローカル未来共創」が各6単位(週6コマ)あり、3年次にはプラス5単位(週5コマ)まで実践的・探究的な科目(「生活ビジネス教養」「地域地球学」)が選択可能で、「総合的な探究の時間」(週1コマ)を含めて最大で週12コマ分がいわゆる教科学習ではない学びになります。

宮野:2年生では「地域未来共創」、3年生では「グローカル未来共創」の学校設定科目を1日に集め、週1回、「地域共創DAY」として1日丸ごと地域探究に充てられるよう時間割を組みます。こうすると、先述した知夫村での畜産もできますし、農家さんと一緒に田んぼをやりたい生徒なら、週1回どっぷりと田んぼに関われることで、田植えから稲刈りまで年間を通して経験できます。

漁師さんに教わりながら、牡蠣についたゴミを取り除く生徒たち=隠岐島前教育魅力化プロジェクト提供
漁師さんに教わりながら、牡蠣についたゴミを取り除く生徒たち=隠岐島前教育魅力化プロジェクト提供

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