ゆる受験、私はこう考える
やりたいことをあきらめない「ゆる中学受験」 2年間の勉強でも間に合う学校選びのポイント
2021.12.24

小学6年生は中学入試の本番直前ですが、低・中学年にとっては塾通いを検討する時期でもあります。大手塾のカリキュラムは小4~6の3年間が基本で、最近は低学年から通塾する子も。難関校を目指して受験勉強にすべてをかける「ガチ受験」が中学受験の一般的なイメージですが、それとは違う「ゆる受験」はないのでしょうか。(写真は、進学個別桜学舎での授業の様子=東京都台東区、亀山卓郎さん提供)
かめやま・たくろう/1968年生まれ。大学時代から塾の教壇に立つ。大手塾、個人塾の講師、塾経営を経て、2007年に東京都台東区上野桜木で進学個別桜学舎(おうがくしゃ)をスタート。21年には同区内に入谷教室も開設。著書に「ハッピーな合格を親子で目指す ゆる中学受験」(現代書林)など。
難関校以外にも良い学校はある
――インターネット上で少し前に、「ゆる受験」を巡り論争が起こりました。きっかけは、6年生の1年間の塾通いで中堅校に合格できるという内容の記事でした。
そんなわけはないだろう、という内容でしたね。記事で名前を挙げられた学校に「6年生から目指そう」と思う人が出てしまうと不幸な結果になるかもしれません。
一方で、「ゆる受験」なんてない、「ゆる受験」は無理というのも違うと思います。ハチマキしめてトップ校を目指す――という一般的な中学受験のイメージとは違う選択をしている人もいる。自身が中学受験を経験している保護者もいて、中学受験に一家言あるという人もいますが、時代は変わっています。受験ってこういうもの、という色が一色しかないのはいいことではない。それだけじゃないでしょうと訴えたいです。
2021年10~12月に日本テレビで放送されたドラマ「二月の勝者」で、主人公の塾講師が「難関校に入れるのは10%」と言っていました。現場の感覚でも、だいたいそのくらいの数字だと思います。では残りの90%はどうなのでしょうか。難関校を目指す世界もあるけれど、そうじゃない世界もある。親御さんたちには、自分の子どもが90%に入る可能性を考えないと子どもの人生をつぶすことになりかねませんよと言いたいです。
ただ、公に出てくる情報や書店に並ぶ本は難関校を念頭に置いた対策本や合格体験記ばかり。10%をみる「救急救命医」ばかりで、残りの90%をみるお医者さんがほとんどいない状況です。私がウェブ(note)で書いている記事で一番読まれているのが「やる気がないならやめてしまいなさい」というタイトルの記事です。このセリフ、親御さんは言ってしまいがちですよね。子どもがサボって勉強しない、YouTubeばかり見ている……といったレベルで悩んでいる人が多く、中学受験のケアは現実にはそこがメインなのです。

――亀山さんが考える「ゆる受験」とは?
私が経営する塾では、最上位を狙わない「親子で疲弊しない中学受験」を提唱しています。19年に「ゆる中学受験」を掲げる著書を出しましたが、当時「ゆる受験」という言葉を他で聞いたことはありませんでした。
受験をただつらい経験にはしたくありません。何かをあきらめて受験することはなるべく避けてほしいと思います。さすがに受験直前は我慢しないといけないこともありますが、小4から習い事をすべてやめる必要はありません。最上位クラスを目指すのでなければ、やりたいことをあきらめなくていい。両立させて、両方を自分の力で手に入れる経験をして、次のステップに進むことが大事です。
基本的に、首都圏模試で偏差値60を切る学校を目指しています。なぜ偏差値60かというと、そのくらいを境に特に算数の入試で応用問題が増えてくるからです。60を切る学校なら基礎中心の勉強で対応できます。
偏差値が高くない学校は、難関校の劣化版ではありません。大手塾に子どもを通わせる親御さんの中には、「あんなところに行っちゃだめ」「落ちた人が行くところ」などと序列化して語る人がいます。でも、難関校以外にも良い学校はたくさんあります。ある中堅校の先生が「志望順位を下げて入った子は『本当はこんなところには来たくなかった』と入学時からふくれっ面。自信を持たせて回復させるのに2、3年かかる」と話していました。その点、うちの塾の子はその学校に行きたくて行っているから、最初からハッピーで有意義な生活を送れます。