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第5回◆中学受験をやめるのは「撤退」ではない、悩んだ末の「戦略」だ

2022.01.07

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加賀 直樹
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長時間勉強することがいいのか?

■お悩み・その⑩  小学生が家族と触れ合う時間を犠牲にし、受験勉強に打ち込んで中高一貫の教育を受けられることと、その道を選ばないのとでは、子どもにとってどちらにメリットがあるのか。この年齢の子どもが長時間勉強することがいいのかどうか、悩んでいます。(京都府・お勤め・小学3年)

山下 小学校3年生の親御さんから。中学受験はこれからですが、気になるテーマではありますよね。

矢野 徹底的に悩んでいただきたいと思います。ご質問を見て、ちょっと気になったのは、「この年齢の子どもが長時間勉強することがいいのか」という部分。勉強する子を「かわいそう」って思ってしまうと、中学受験は向いてないかなと思うんです。お子さんではなく、保護者の方が向いていない。「勉強する」って、僕はすごく恵まれていることだと思います。小学生の子どもたちを指導しながら、「この子たちは本当に幸せだな」って。中学受験できない子なんて、いっぱいいる。

言語学者の金田一秀穂先生がおっしゃっていました。「言葉の数というのは、デジタルカメラの画素数みたいなものです」。10万画素しかない子どもと、1000万画素ある子どもとでは、見える景色の鮮明さが違う。中学受験の勉強をしている子がニュースを見るのと、してない子が見るのって、見える風景も違ってくる。勉強って、お子さんの世界を広げるもので、もっとエキサイティングなものだと僕は思います。特に3年生、4年生あたりは、そう感じてほしい。中学受験の勉強をする過程で、5年生、6年生だと苦しい時もあると思います。でも、根本的に、勉強って楽しいもの。そういう考え方を、保護者の方にはぜひ持ってほしいと思います。

清水 この質問の1行目の「犠牲」っていう言葉に、親御さんの不安がにじみ出ているんだな、と僕は思います。犠牲という表現を使ってしまうのは、ネガティブな印象を持たれていると思うんですよ。大人になればなるほど、「エピソード記憶」、つまり何かの体験にひもづけるとか、何か体を使って覚えるみたいな記憶にしないと、頭に残りにくくなるんですけれども、子どもの場合は暗記などの「直接記憶」をしやすい年齢です。そういう意味でも、良いことっていっぱいある。中学受験で、もしくは小学校時代に覚えたことって、将来の礎(いしずえ)にもなります。捉え方をまず変えていただきたい。また、小学3年生の頃から「長時間やる」っていうわけでは、もちろんありません。むしろ、「長時間やろう、やらせよう」って考えてしまうと、うまくいかないと僕は思います。

子どもたちに有効な教え方は、最初に教える量、「教えるものはこれくらい」って最初に伝えるんですね。そのほうが子どもとしても、ターゲットを決めて学びやすい。だから小学校の授業には、必ず黒板に「めあて」が書いてあるわけですね。時間で考えるんじゃなくて、まず量で考える。「長い時間やろう」という発想ではなく、「決めたことをいかに早く正確に終わらせていくか」に変えていくと、気づいたら自分で長時間やれるようになっている。すると、犠牲という言葉を使わなくても、5、6年生の受験生活をサポートできると思います。「勉強を楽しくやっていこう」「短くやっていこう」にしていただきたい。楽しく、なるべくご本人のモチベーションが上がる形でサポートしてもらえたらと思います。

山下 最後に、お二人の先生から、受験生、保護者の皆さんに応援のメッセージを。

矢野 いよいよ入試が近づいてきました。2月1日は、激戦が予想されています。ちょっと厳しい話を最後にします。中学受験で第1志望校に合格できる子は、3人に1人、4人に1人と言われています。ひょっとしたらお子さんが第1志望校で合格をもらえないかもしれない。その時に、ぜひ保護者の方は、もう泣きたい時は一緒に泣いてもらって構わないですし、次の日に向けて一所懸命励ましてほしいと思います。精神的に追い詰められてどうしようもなくなった時には、それこそ通っている塾の講師を頼ってください。どうぞ、最後の最後まで戦い抜いてください。心を折らずに最後までお子さんに寄り添っていただけるのが一番良いと思います。最後までお子さんを支え続けてください。

清水 実際、私も2月1日の受験に落ちて、第2志望のところに拾っていただいた。振り返ってみて、「落ちて良かった」って本気で思います。負け惜しみなんかではなくて、落ちて本当に良かった。選んだ道を正解に変えることができたと思っています。落ちたその日に、反省文を書いたんですね。「自分のここが悪かった」。その文を、今でも保管しています。悪かった点を五つ書いたんですよね、「周りを気にしすぎない」とか。そういうものを自分で書いて、大学受験の時もそれを見直して、「次はリベンジしよう」「次は頑張ろう」って、プラスに変えてきました。中学受験に大いにのめり込んでいただいて、それで出た結果に対しては、もう感情をすり合わせるように泣いてもいいと思います。せっかくの一大イベントですので、まず、のめり込む。まず夢中になって家族でワーッとなっていただいて、盛り上がって、次の道に、正解への道に変えてもらいたいと思います。

「CHANCE」の2個目の「C」に「T」を足すと、「CHANCE」が「CHANGE」に変わります。この「T」は「トライ」のTなんですね。中学受験というチャンスにトライして、良い方向にチェンジしていただきたいと思います。今日が新しい何かの「プラスT」になってもらえたらと思います。

(2021年12月3日の再録はおわり)

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