ゆる受験、私はこう考える
「ゆる受験」の言葉に感じる疑問 中学受験は「逆上がり」、塾通い短いと「キツ受験」に
2021.12.27

中学受験は「逆上がり」に似ている
わたしは中学受験指導を始めて今年で28年目となる。いままで大勢の小学生たちの中学受験勉強の様子を見てきた。ことばにすると当たり前のことかもしれないが、塾に通うや否やスポンジのように多くの知識を吸収し、学力をぐんと伸ばしていく子もいれば、真面目に塾に通い続けているにもかかわらず、成績がなかなか上向かない子もいる。保護者の手のかからない子もいれば、入試本番まで保護者があれやこれや指示してやらないと受験勉強に取り組めない子もいる。
中学受験は「逆上がり」に似ているなとつくづく感じる。
周囲から何の助言を受けなくても一発で逆上がりできる子もいれば、何度も他者から支えてもらって時間をかけてやっとできるようになる子もいる。根気よく支えてやったとしても、いつまで経っても失敗を繰り返してしまう子もいる。
短期間の受験勉強で成果を出し、志望校合格を射止められる子もいれば、長い間受験勉強に励んでも思うような成績をとることができず、結果として第1志望校合格がかなわない子がいるかもしれない。
これは子が全面的に悪いわけではないし、かといって支えている人間に非があるわけでもない。もちろん、これは「受験勉強」という一側面に過ぎぬ話であるから、わたしは「地頭」や「素質」などというチープで非科学的なものを持ち出すつもりもない。
ただ、ひとつ言えることがある。「逆上がり」の例でいえば、「何度も他者から支えてもらって時間をかけてやっとできるようになる」タイプの子どもたちがその大半を占めるということだ。
話を戻そう。
中学受験を志す子どもたちが塾通いを始めるのは一体どのタイミングからなのだろうか。
わたしのTwitterアカウント(@campus_yano)の質問機能を活用して、この10月に中学受験経験のある子を持つ保護者を対象にその回答を募ってみたところ、以下のようになった(回答1282票)。

塾通いのタイミングとして最も多かったのは「小学校4年生」である。「小学校4年生以前」とすると、中学受験生たちの81%が該当する。
一方で、「小学校6年生」と回答したのはわずか6%に過ぎない。
子どもたちの大半は、志望校合格の栄冠を手に入れるために長い間塾通いをして準備するのが一般的なのだ。これはポジショントークでは決してない。
中学受験塾のカリキュラムを考えると、多くの塾では小学5、6年の2年間に入試で出題される範囲を網羅する。理屈の上では小学5年からの塾通いで「間に合う」わけだが、この2年間は子どもたちに求められる学習の質量ともにかなりハードなものになるのが普通だ。だから、保護者はその数年前から子が「助走」できるようにと塾通いをすすめるのである。それが結果として「ゆるやか」に子が学べる道となる。
「ゆる受験」「省エネ受験」などという文句に対して安易に期待してはいけない。
繰り返すが、中学受験はそんなに甘い世界ではないのだから。
