一色清の「このニュースって何?」

農産品輸出、初の1兆円超え → 衰退する日本農業の逆襲なるか

2022.01.07

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、輸出品として人気の高い和牛のブロック肉)

1人当たりコメ消費量は半世紀で半減

2021年の農林水産物・食品の輸出額が1兆円を超えました。政府は「輸出1兆円」の目標を06年に掲げましたが、15年の歳月を経て達成しました。ただ、これは通過点に過ぎず、政府は「25年に2兆円、30年に5兆円」という先の目標を掲げています。

政府がなぜ輸出に力を入れるのかを理解するには、日本の農林水産業の現状を知る必要があります。日本の農林水産業、中でも農業は衰退の一途をたどっています。ふだん農業の仕事をしている人(基幹的農業従事者)の数は、毎年減っています。15年に約176万人でしたが、20年には約136万人になりました。平均年齢は年々上がり、20年の平均年齢は67.8歳です。65歳以上の人が7割近くを占めている「高齢者による産業」になっています。高齢化と後継者不足により荒れ放題の農地(耕作放棄地)が増え、その合計面積は今や富山県の面積とほぼ同じになっています。

農業が衰退している原因はいくつかあります。まず、人口減少や食生活の変化により日本人の主食だったコメの消費が減っていることです。日本人1人当たりのコメの年間消費量は、ピークだった1962年度には118.3キログラムでしたが、2020年度には50.7キログラムと半分以下になっています。コメは特別に高い関税が認められていて外国からの輸入はほぼありませんが、国内の消費量が一直線に落ちていては、じり貧を避けることはできません。日本の農家は昔からコメ作りを中心にしているところが多く、広く打撃を受けています。

外国からの輸入による打撃もあります。肉類の日本人1人当たりの消費量は、20年度には1965年度の3.6倍にまで増えていますが、その間に関税の引き下げなどにより外国からの輸入品が急増しています。消費が増えても、外国産の肉におされて国内の畜産農家の経営は楽ではありません。コメ以外の穀物や果実も外国産との競合に苦しんでいます。

外国の農産品におされるのは、値段で勝てないためです。それは、農業の適地である平野が少ない日本の宿命と言えます。日本の農家の平均経営面積は約3ヘクタールですが、アメリカはその約60倍、オーストラリアは約1500倍、EUは約5倍だそうです。広いところで耕作をしたり酪農をしたりすれば、効率が良くなり、低コストで生産できるのです。

農業という仕事自体のイメージが若い人にうけないという事情もあります。規則的な休みが取れずきついとか、家内労働的で地味だとか思われているようです。後継者不足に悩まされるのは、こうしたイメージによるところも少なくありません。

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