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農産品輸出、初の1兆円超え → 衰退する日本農業の逆襲なるか

2022.01.07

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一色 清
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人気なのは和牛、リンゴ、ホタテ貝…

こうした農業のじり貧を打開するには、「守り」から「攻め」に転じるしかないと政府などが考え始めたのは、21世紀に入ってからです。それまでは、日本の農林水産品は値段で勝てないのだから、輸入品に高い関税をかけたり、農家に補助金を出したりして守らないといけないという考え方しかありませんでした。しかし、貿易自由化の潮流や財政赤字の中、そうした考え方には限界が来ていました。そこで、国内がじり貧なら海外に打って出ようという考えに変わってきたのです。それが06年の「輸出1兆円」の目標でした。

日本の農林水産物・食品の売りは、品質の良さです。たとえば、和牛です。細かくてきれいなさし(脂身)が入った肉は和牛ならではのもので、海外にはありません。経済成長により肉食の増えているアジアだけではなく、アメリカでも評価され、輸出額は年々増えています。

果実では、リンゴが輸出の主力です。特に台湾向けが多く、旧正月には、めでたさを示す赤い高級贈答品として使われています。ブドウでは皮ごと食べられるシャインマスカット、イチゴでは甘いあまおうが香港や台湾向けに伸びています。日本の果実は品種改良によって、外国産にはない甘みや食べやすさを作り出していて、高い値段でも売れています。

ホタテ貝は中国で人気です。刺し身やすしネタとしてのほか、殻つきのままバター醤油で焼いて食べたり、中華料理の材料にしたりします。中国でもホタテは養殖されていますが、日本のホタテは品質が評価されていて、21年は20年の約2倍の輸出額になっています。

2010年代に訪日外国人旅行者が激増したことも輸出拡大の追い風になりました。日本でおいしい食材やお酒を知った外国人が国に戻ってリピーターになって購入しています。今は新型コロナの影響で日本に旅行に来ることができなくなっていますが、日本の食品をネット通販で買う動きが広がっているそうです。

輸出が増えているのはいいことですが、1兆円達成で日本の農業の衰退を食い止められるとは、とても言えません。日本の農業・食料関連産業の国内総生産額は53兆円に上ります。また、海外の農林水産物を日本が輸入している金額は約9兆円に上ります。1兆円という輸出額は、それに比べるとまだまだわずかです。しかも1兆円の中にはウイスキーや日本酒などの加工品も含まれているため、農家や漁業者の利益につながる1次産品の輸出額は、もっと小さくなります。日本の農業が立ち直るためには、もっともっと輸出額を増やさないといけません。そのためには、品質をさらによくして、「日本の農林水産物・食品はおいしい」という評判を高めるしかありません。30年には5兆円という目標を達成するため、関係者にはさらにがんばってほしいと思います。

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