一色清の「このニュースって何?」

成人年齢が18歳に → 「なぜ今?」三つの理由を知っておこう

2022.01.14

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、「成人の日を祝うつどい」に出席した新成人たち=2022年1月10日、横浜市港北区の横浜アリーナ、瀬戸口翼撮影)

146年ぶりの引き下げ

成人年齢、つまり法律的におとなになる年齢が4月に20歳から18歳に引き下げられます。1876(明治9)年以来、146年ぶりの成人年齢の変更となります。変更後は18歳になれば携帯電話を買ったりアパートを借りたりする契約行為を親の同意なしにすることができるようになります。ただ、おとなを実感する「酒やたばこは20歳から」という決まりは変わりませんし、刑事事件を起こした時などにおとなと違う扱いをすることを決めている少年法の対象年齢も20歳未満で、これまでと変わりません。民法上の成人年齢が引き下げられても、18歳、19歳は完全なおとなではなく、こどもとおとなの間の中ぶらりんな年代となります。そのせいか、世間の関心はもっぱら「来年の成人式はどうなるのだろう」というところにあるようにみえます。

中途半端な感じのする成人年齢の引き下げをなぜ今行うのでしょうか。それには理由が三つあると思います。

一つめは、「シルバー民主主義」に歯止めをかけようとしたためです。シルバー民主主義とは、高齢者が決める民主主義という意味です。日本は高齢化が進んでいます。加えて、若者の投票率は高齢者よりずっと低くなっています。選挙に立候補する議員や首長は、当選するために、票を多く持っている高齢者の喜ぶ政策に力を入れがちになります。それでは日本全体のためにはなりませんし、日本の未来のためにもなりません。若者の意見をもっと取り込まないといけないということから、20歳以上となっている選挙権年齢を引き下げようという考えが強まりました。2007年に成立した国民投票法で投票年齢が18歳以上となり、16年には公職選挙法が適用されるすべての選挙で選挙権が18歳以上に拡大されました。投票年齢が18歳以上になるのであれば、ほかの権利や義務が発生する年齢も18歳にしなければおかしいということになり、民法の成人年齢引き下げの議論は始まりました。きっかけは実は選挙だったのです。

二つめは、少年による凶悪な事件が発生するたびに聞かれる少年法への批判にこたえようとしたためです。少年法は20歳未満に適用される法律で、事件などを起こした少年についての扱いを決めています。基本的な考え方は、少年は未熟なため保護して更生させることが大事だというもので、おとなと同じように刑事事件として起訴されるのは、一部の凶悪な犯罪に限られていました。また実名や顔写真など本人が特定される報道も禁じられていました。

しかし、こうした少年を守ろうとする考え方に対して、「発育のいい現代では18歳や19歳になるとおとなと変わらない」とか「匿名で守られているため、抑止力が効かない」とか「被害者の感情を考えろ」などという批判がありました。こうした面から「若者にもう少し早くからおとなとしての責任を持たせたほうがいい」という空気が強まり、それが少年法だけでなく民法の成人年齢引き下げ議論にもつながった印象があります。

民法が変わるのにあわせて4月から少年法も変わります。法律の対象年齢は20歳未満で変わりませんが、18歳と19歳の少年については「特定少年」と位置づけて、検察官に送られる罪の幅を大きく広げ、おとなの犯罪の扱いに近づけました。起訴されれば、実名や写真など本人を特定できるような報道もできるようになります。

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