2025大学入試どうなる

共通テスト「情報」、大学教授・予備校講師ら「拙速な導入に反対」

2022.01.20

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佐藤 剛志
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2025年の大学入学共通テストから出題される教科「情報」に関して、大学教授や予備校講師らでつくる「入試改革を考える会」が1月13日、拙速な導入に反対するとの声明文を発表しました。文部科学省で会見を開いた同会のメンバーは、現状のまま試験を行った場合の問題点を指摘。「『情報』を拙速に導入すれば多くの受験生が負担増を強いられる。また、専任教員の不足などから公平・公正な入試を受けられなくなる可能性が極めて高い」などと訴えました。(写真は、「入試改革を考える会」の記者会見=2022年1月13日、文部科学省)

受験生の負担増に懸念 「広く薄く勉強することになる」

大学入試センターは昨年3月、25年の共通テストから教科「情報」を出題すると発表しています。国立大学協会は今月にも、一般選抜の受験生には原則として情報の試験を課す方針を正式決定する見込みです。現在、国立大の多くでは共通テストで5教科7科目を課していますが、正式決定されれば6教科8科目を課す大学が増えるとみられています。

入試改革を考える会のメンバーは会見で、「現状でも受験生の学習範囲は膨大で、かなりの負担を強いられている。さらに試験科目を増加させれば受験生から着実な学習を行う余裕を奪い、表面的な理解や機械的な暗記を促進する弊害が生ずる」との見方を示しました。

文中写真① 共通テスト・反対声明

また同会は、高校で情報を教える専任教員が全国的に不足している点も指摘しました。

文科省の調査(2020年5月1日時点)では、全国の公立高校には情報科の担当教員が5072いるものの、このうち情報の免許状を保有するのは3839人で、全体の2割以上は臨時免許状の保有者か免許外教科担任となっています。全員が情報の免許状を持つ東京都や埼玉県のような自治体がある一方、免許外教科担任の割合が一番多くなっている県もみられます。

会では都道府県ごとの格差が大きいとして、「この状況で情報を導入することは、居住地域や出身校による有利・不利を生み出す危険性がある」としました。

同会代表で中京大の大内裕和教授は、「推進する人のなかには、入試に導入すれば情報の専任教員は充実するとしている人がいるが、これは本末転倒だ。これは現状の地域間格差を認めているわけで、そのまま入試を行うことは不公平・不公正な入試が行われることを意味している」と語りました。共通テストで情報の出題範囲となる「情報Ⅰ」は2022年4月に始まる新科目のため、しばらくの間は担当教員や高校による授業の質のバラツキが大きくなることが予想される、とも指摘しました。

都立高入試のスピーキング導入 「公平で正確な採点はできるのか」

会見では、東京都立高校の2023年度入試から導入が予定されている英語スピーキングテストの課題についても触れました。スピーキングの試験で公平・正確な採点を行うことの難しさや、テスト実施を委託された民間業者による個人情報漏洩や利益誘導の危険性、出身家庭の経済力による教育格差を拡大する危険性などを挙げた上で、導入の中止を求めました。

都立高の元英語教員からは「スピーキングのどのような力をどのように測っているのか、テストとして妥当であるか、という点でも疑問がある」との指摘が出ました。

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