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NFTアートは新時代の美術市場か? 売買にはリスクも 8歳の作品が高騰、親子が話し合ったこと

2022.02.03

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夏野 かおる
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2021年8月、都内で働く草野絵美さんは当時8歳の長男とともにNFTアートの取引を実施。その結果、長男がつくったデジタルアートが二次流通で最高180万円と高額で取引され、2022年2月には東映アニメーションによるアニメ化も決定しました。その莫大な流通総額が各所で取り上げられる一方で、「子どもの頃から、大きなお金を稼ぐと金銭感覚が狂う」「NFTってなんだか危なそう」という声もあります。今回は草野さんにNFTアートを始めた経緯や子どもとのコミュニケーションを、早稲田大学大学院の斉藤賢爾教授に、NFTの仕組みや現状の課題などを伺いました。(写真は、NFTアート作品を手に持つ長男の様子=草野さん提供)

NFTは「映画館のチケット」 健全に使えばデジタル社会が便利に

NFTとデジタルアートをかけ合わせた「NFTアート」。センセーショナルなニュースばかりが注目されがちですが、そもそも「NFT」とはどのような技術なのでしょうか。

ブロックチェーンの専門家である早稲田大学大学院の斉藤賢爾(さいとう・けんじ)教授は、NFTの考え方自体は別段新しいものではなく、「映画館のチケット」のような存在と話します。

「NFT(non-fungible token)は、日本語に訳すと『非代替性トークン』となります。『トークン』とは、代用貨幣や印、証拠を意味する言葉です。加えて、『非代替性』とは、あるトークンを他のトークンで置き換えられないことです。逆に、『FT(=代替性トークン)』では、それぞれのトークンを区別せず、同じく『〇〇円の価値があるトークン』と見なします」

「たとえば、1万円札には記番号(数字とアルファベット)が印刷されており、1枚1枚を区別できるようになっています。しかし、実際に買い物をする際には、それぞれの番号は無視して、同じく『1万円の価値がある紙』として扱いますよね。これが代替性トークンです」

「一方のNFTは、それぞれの番号を区別します。映画館のチケットは、同じ席種であればどれも同じ値段ですが、1枚1枚が異なった席と結びついていますよね。先ほどの1万円札を『どれも同じく、〇〇円の価値です』と扱ったのに対し、『これは△△と結びついています』と決められているわけです」(以上、斉藤教授)

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本来であれば複製・改ざんが簡単にできるデジタルデータに、ブロックチェーンの技術を使い、その一意性(そのデジタルデータが唯一無二であること)を担保する――NFTがアートの分野で注目されるのは、こうした“理解”が背景にあります。

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