2025大学入試どうなる
国立大受験に「情報」追加へ 中村高康・東大教授「受験生の負担重すぎる」
2022.02.22

国立大学協会(国大協)は1月、2025年の大学入学共通テストから、全国立大が一般選抜の受験生に対して、必履修科目「情報Ⅰ」を範囲とした教科「情報」を課すことを原則とする方針を決めました。大学ごとの対応は来年度中に公表されますが、多くの受験生は現在の「5教科7科目」に情報を加えた「6教科8科目」の試験対策をする必要が出てくるとみられます。情報科免許を持つ教員数には都道府県ごとにバラツキがあり、高校の教員らからは入試の公平性への疑問を訴える声も聞かれます。どう考えるべきなのでしょうか。教育社会学が専門の中村高康・東京大大学院教授に聞きました。(写真は、「情報」を加えた「6教科8科目」を課すことを原則とすることを明記した、国大協の1月の発表資料)
(なかむら・たかやす) 専門は教育社会学。群馬大学教育学部助教授や大阪大学大学院人間科学研究科准教授などを経て、2013年から現職。教育制度や社会階層、大学入試を中心とした「選抜」についての研究成果を数多く発表。著書に「暴走する能力主義――教育と現代社会の病理」(ちくま新書)、編著に「大学入試がわかる本――改革を議論するための基礎知識」(岩波書店)、「現場で使える教育社会学 教職のための『教育格差』入門 」(ミネルヴァ書房)、「少子高齢社会の階層構造1 人生初期の階層構造」(東京大学出版会)など。
負担増、議論したのか
――国立大では2004年の大学入試センター試験から5教科7科目の試験を課すのを原則としてきました。情報が加わると21年ぶりの科目増。国大協の決定をどのように受け止めましたか。
決定とは違うところに着地してほしかったです。私が一番気にしているのは受験生の負担。8科目を課すことの負荷について、国大協はどのくらい議論したのかがよく分かりません。報道を見ても、その議論がほとんど出てこないのです。
教育制度というのは一つの目的だけででき上がっているものではありません。いろいろなものを調整しながら、多目的に様々な機能が重なり合ってできています。「情報が大事だから試験に出す」と言い始めたら、極端に言えば、高校生が学んでいる全教科・科目を試験に入れなければいけないという話にもなります。
高校での情報教育に関しては、長年の実績があり、努力してきた先生や団体、学会もあると思います。そうした努力を無駄にしてはいけないと思います。しかし、「これからの社会を生きるのに情報の知識が大事」という基準とは別に、「試験に入れた際にどんな不具合が起こるのか」を考えなければなりません。入試に入れることで、受験生が非常にしんどい思いをしたり、対応に困ったりすることは避けるべきなのです。
改革を推進する側には、マイナスの効果を予測しきれない部分があります。