大学入試改革の「本丸」
佐賀大・西郡大さん「一般選抜に『特色加点』を入れて起きた受験生の変化」
2022.03.01

多くの大学の入試区分のメインである一般選抜(一般入試)をどう変えていくのか、受験生の能力をどう評価するのかは、大きな課題です。佐賀大学は2019年度入試から、一般選抜の出願時に「高校時代の活動実績」「大学のアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)との関連性」を受験生に書いてもらい、一般選抜の得点に加点する「特色加点制度」を導入しました。制度を取り入れてから、受験生や入学者にどんな変化があったのか、西郡大アドミッションセンター長(教授)に聞きました。(写真は、佐賀大学で行われた大学入学共通テストの開始を待つ受験生=2022年1月15日)
(にしごおり・だい)東北大学大学院教育情報学教育部博士課程修了。博士(教育情報学)。2009年、佐賀大学アドミッションセンター准教授、16年教授。17年からアドミッションセンター長、19年から学長補佐、学長企画室室長。高大接続における入試制度設計などの研究に取り組む。
入学手続き率、入学後のGPAに差
――最近は国立大学でも一般選抜(一般入試)だけでなく、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)が広がっています。佐賀大学はどのような状況ですか。
2021年度入試で見ると、入学定員1278人のうち、一般選抜が73%、総合型・学校推薦型選抜が27%です。総合型と学校推薦型の大きな違いは学校長の推薦状が必要かどうかで、いずれも大学入学共通テストを課すものと課さないものがあり、面接などを行います。10年前はAO・推薦の比率が17%でしたから、10ポイント増えています。
――各大学は入試区分ごとにGPA(成績評価)や就職状況などの調査をしています。佐賀大学でも同様だと思いますが、特徴がありますか。
学部によって違います。4年卒業時の単位取得数と成績、ストレート卒業か留年か、1年前期から4年後期までのGPAの推移などを調べています。1年前期から一貫して推薦入学者のGPAが高い文系の学科もあれば、大学入試センター試験(大学入学共通テスト)を課さない推薦入学者のGPAが低い理系の学科、GPAに差がない学科など、さまざまです。
第一志望の比率は21年度入試で、一般選抜56%に対して、総合型・学校推薦型は94%と非常に高いです。
――他大学で聞いても、AO・推薦は文系学部で効果が出やすい傾向があります。理系は基礎知識を積み上げていくという学問の性格の違いでしょうか。
理系は例えば建築にしても物理、数学など関連する分野の基礎学力が必要です。佐賀大学の推薦は専門高校からも受け入れているので、教科型の基礎学力に不安を抱えている学生がいる可能性もあります。
――佐賀大学は一般選抜の出願時に、「高校時代の活動実績」「大学のアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)や入学後の学習との関連性」を各400字以内で書いてもらい、一般選抜の得点に加点する「特色加点制度」を19年度から導入し、注目されています。
提出は任意です。合格ボーダーライン付近の受験者のみ、加点の対象にします(教育学部と農学部は全員採点)。例えば理工学部の前期日程は共通テスト+個別試験の1500点満点に最大30点加点、農学部の前期は1000点満点に最大50点加点します。最大加点は学部によって15~50点です。
19年度に理工学部と農学部の改組に合わせて導入し、21年度から教育、芸術地域デザイン、経済学部が加わり、独自の選考方法をしている医学部を除いて全学部に広がりました。
――特色加点制度を導入してから、一般選抜入学者に変化はありましたか。
特色加点の申請者は、いくつか特徴があります。まず入学手続き率は、20年度入試で申請者92.3%、未申請者81.8%と差があります。1年終了時の学業成績(GPA)は、申請者の方が高い。また入学時のアンケート調査を分析すると、アドミッションポリシーに対する理解は申請者の方が高く、入学前の行動や考え方の特性として、申請者は自立性、リーダー性が高いという結果が出ています。
21年度入学者のアンケート調査(回答483人)では、「申請によって志望学部へ入学意思が固まった」と「これまで自分ががんばったことを振り返る機会になった」が、5点満点で順に4.25、4.53と非常に高いです。特色加点を導入したのは、進学先とのミスマッチを解消したいことがありましたが、今のところ機能しているととらえています。
総合型や学校推薦型選抜の提出書類には、高校側の指導が入って完成された文章が多いですが、一般選抜の書類にはそこまで手が入っていません。生徒が自分で書くことで、自省する機会を入試プロセスに組み込み、適性や志向との擦り合わせを自ら行ってもらう狙いが実現できていると思います。