学習と健康・成長
子どもがよく忘れ物をするのはなぜ? 原因は「脳の中の黒板」、記憶を定着させるポイントは
2022.04.21

子どもはうっかり忘れ物をするもの。そう分かってはいても、ついつい怒ってしまう保護者も多いのではないでしょうか。記憶の仕組みを研究する専門家・広島大学の湯澤正通教授に、子どもの忘れ物が多い原因や対策、保護者のケアの仕方について聞きました。
(ゆざわ・まさみち)東京大学文学部心理学科卒業。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了。博士(心理学)。研究分野は社会科学、心理学、教育心理学。脳の働きのワーキングメモリ、記憶の仕組みを研究している。著書に『ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援 学習困難な子どもの指導方法がわかる!』(学研プラス)など。
脳の中の黒板――忘れ物に大きく関わるワーキングメモリとは
――授業に使う持ち物を持ってこなかったり、宿題をやっていなかったり……子どもの忘れ物に頭を抱えている保護者は少なくありません。なぜ子どもは大人に比べて、忘れ物が多いのでしょうか?
前提として、忘れ物自体は誰にでもあるものですから、多少持ち物を忘れたりする程度で発達を心配するほどではありません。
ただ、困っている保護者の方は多いようで、よく相談を寄せられます。ひんぱんに忘れ物をすると学校の先生から注意をされることもありますし、日常生活でも困りごとが出てくるかもしれませんからね。
実際、忘れ物をする原因の一つに、ADHDの特性が強いことが挙げられます。他のものに気を取られ、忘れてはいけないものが記憶に残らない。結果として忘れ物が多くなってしまうのです。
ただ、大人に比べて子どもがよく忘れ物をするのは、「ワーキングメモリ」が充分に機能していないことも大きな原因です。
――ワーキングメモリとは、どのような働きをするものなのでしょうか?
ワーキングメモリは一時的に情報を記憶し、同時に処理する脳の働きのことです。つまり話を聞きながら考えるために、情報を覚えておく場所。だから、話が終わると頭から消えてしまう。私はよく、書いたものがすぐに消されてしまう「脳の中の黒板」のようだ、とたとえています。