漢字学習 どこまで必要?

漢字の「正しい筆順」存在しないのに… 教科書に掲載、入試に出題されることも

2022.03.15

author
葉山 梢
Main Image

漢字の「とめ・はね・はらい」や筆順について、多くの学校で細かい指導がされています。デジタル化の影響で、文字を書く機会が減っている現代。国語教育が専門の冨安慎吾・島根大准教授は「今のままの漢字学習でいいのか議論するタイミングが来ている」と話します。

冨安慎吾

話を聞いた人

冨安慎吾さん

島根大准教授

とみやす・しんご/1981年生まれ。広島大大学院教育学研究科博士課程修了後、島根大教育学部講師などを経て現職。専門は国語教育学。

「書写」と「コミュニケーション」に分裂

――文化庁は2016年の「常用漢字表の字体・字形に関する指針」で、漢字には様々な字形があり、細かな「とめ・はね・はらい」を気にしすぎる必要はないと明記しています。指針が現場に浸透していないのはなぜでしょうか。

小中学校の国語の中では、漢字の学習が「書写」と「コミュニケーション手段」に分裂しているところがあります。書写の学習では丁寧に書くという点から「とめ・はね・はらい」が重視されますが、書写以外では、指針の通り、他の字との区別がつくならば、「とめ・はね・はらい」を気にしすぎる必要はありません。しかし、ほとんどの小学校ではどちらも同じ先生が教えるので、書写とそれ以外で指導を変えると一貫性を欠くことになるのが難しい点です。

小学校は文字を習得する最初の段階なので、「とめ・はね・はらい」をいい加減にしたくないという先生が多いことも影響しているように思います。一方で、中学校・高校と校種があがるごとに先生の評価がおおらかになっていくという研究結果があります。

漢字の「正しい筆順」は存在しない 冨安慎吾・島根大准教授

――漢字の学習では、いまも何度も書かせる指導が主流です。こうした指導法をどう思いますか。

繰り返し書くことは、多くの人にとっては覚えるための有効な手段です。漢字を思い出すとき、空中に手で書くそぶりをする「空書(くうしょ)行動」をすることがありませんか。あれは漢字を手や指の動きで覚えているからです。

一方で、何度も書かされることで漢字を嫌いになってしまう人もいますし、向いていない人もいます。何かの罰のように何度も書かせると、逆効果になることがあります。

バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ