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『反知性主義』著者の森本あんりさん「ICUから東京女子大学長への転身」

2022.03.18

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中村 正史
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『反知性主義』などの著作で知られる森本あんり・国際基督教大学(ICU)教授が、4月から東京女子大学学長に就任します。キリスト教系の両大学は教育内容などの共通点がありますが、共学と女子大などの違いもあります。学長就任のいきさつや、女子大に求められるもの、リベラルアーツの必要性などについて聞きました。(写真は東京女子大学のキャンパス)

森本あんり

話を聞いた人

森本あんりさん

国際基督教大学教授、東京女子大学学長(2022年4月~)

(もりもと・あんり)国際基督教大学、東京神学大学大学院を経て、プリンストン神学大学院博士課程修了。博士(組織神学)。国際基督教大学人文科学科教授。2012年~20年、学務副学長。22年4月1日から東京女子大学の学長に就任。専門は神学、宗教学、アメリカ研究。

東京女子大はICUの姉のような存在

――『反知性主義』『異端の時代』『不寛容論』などの著作で知られ、ICUの著名な教授である森本さんが東京女子大学の学長になることが公表された時、大学関係者の間でざわめきが起きました。ICUと東京女子大学は、同じキリスト教系の大学ということくらいしか共通点が思いつきませんが。

私は1990年代からICUで教える傍ら、東京女子大学で非常勤講師をしていました。牟礼キャンパス(三鷹市)があった頃からです。ですからこのキャンパス(杉並区善福寺)にある美しい建物も以前からなじみがあります。

1918(大正7)年に創立されてから104年になる東京女子大学は、ICUの姉のような存在です。ICU は1953年の開設ですが、創立会議が46年に東京女子大学で開かれました。ここからICUが生まれたといってもいいのです。

それと、大学が改革を志す時には、学長は外から来た方がやりやすい。私がICUの学務副学長時代に様々な取り組みをしたことなどが評価されて、候補に挙がったのではないでしょうか。

――東京女子大学とICUには共通点もありますが、女子大と共学の違いもあります。東京女子大学にはどのような印象を持っていますか。

東京女子大学は、戦時中の皇国教育とのあつれきを乗り越えた歴史を持っている大学です。当時の石原謙・第3代学長が軍部からの要請に応じず、折り合いをつけて苦難を乗り越えました。

キャンパスは美しく、手の込んだデザインの古い建物がたくさんあります。昨年12月には、テレビ東京「新美の巨人たち」で礼拝堂などの建物が特集されました。

また、常に時代への挑戦を続けてきた大学です。女子大には良妻賢母の育成を目指すところが多かった中で、高度な一般教養を身につけ、時代を担う自立した女性を育成しようとしてきています。

――女子の共学志向が高まり、女子大は以前に比べて志願者が減っています。女子大の役割をどう考えますか。

女子大の存在意義を論じているのは日本だけではありません。米国にはかつて約200の女子大がありましたが、約40大学に減っています。しかし、退潮しているかと言うと、そうではありません。残った大学は、議論の末に共学ではなく女子大を選んだところで、志願者はむしろ増加しています。優れた女子大でリーダーシップの経験を持つことは、国を挙げて女性の管理職を増やそうとしている今の日本にこそ、必要な教育です。

――昭和女子大学は坂東眞理子さんが学長になってから、グローバル教育やビジネス系に大きく舵を切りました。

いい成功例だと思います。女子大の旧来の学部系統ではなく、高い教養を備えた自立した女性を育成するという点では、共通するものがあります。ただ、私たちには私たちのアジェンダがあります。

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