都立高入試スピーキングの不可解
都立高入試英語スピーキングテスト、民間試験GTECとそっくり 都教委は「似ていても違う」
2022.03.17

今年11月27日に初めて実施される東京都立高校入試の英語のスピーキングテスト「ESAT-J」。3回のプレテストを見た教員らから、ベネッセコーポレーション(岡山市)が行う英語テストGTECのうち、中学2、3年レベルのGTEC-Coreと「酷似している」、「GTECを受けて準備する子が有利になる」との指摘があがっています。ESAT-Jの事業主体は東京都教育委員会で、ベネッセと「共同実施」する形。都の主体性はどこにあるのか、入試の公平性は保てるのか、都教委に取材しました。(写真は東京都庁)
「まんまやん!」「これはGTECだ」
「GTECに変えた方がいいのかな」。東京都内の区立中学校に勤める30代の女性教員はそう話す。2月、昨秋行われたESAT-Jのプレテストの問題を見た時の第一印象だ。
今年度まで勤務校では、生徒たちに英検(実用英語技能検定)を案内してきた。GTECは学校単位でしか受けられない。「試験において慣れはとても大事。ぱっと見て、生徒が『これ、やったことある』と感じるのであれば、GTECにした方がいいと思う」と話す。
区立中1年の男子生徒は3月、ESAT-Jのプレテスト(プレテストはこちら)と、ネット上にあるGTECのサンプル問題(サンプル問題はこちら)に挑戦してみた。日本語の問題文も似ていて、「どっちがESAT-JでどっちがGTECなのか、交ぜられたら分からない。まんまやん!」。生徒の中学校ではGTECを受験していない。「GTECを受けている学校は(都立高入試)対策になる。ずるくね?」と話した。
ESAT-J | GTEC | |
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PartA(パートA)の冒頭説明 | PartAは、全部で2問あります。聞いている人に、意味や内容が伝わるように、英文を声に出して読んでください。はじめに準備時間が30秒あります。録音開始の音が鳴ってから解答を始めてください。解答時間は30秒です。 | パートAは、全部で2問あります。聞いている人に伝わるように、英文を声に出して読んでください。はじめに準備時間が30秒あります。解答時間は30秒です。 |
(ESAT-J 第3回プレテストのPartAの問題とGTEC-Coreのサンプル問題パートAの問題冒頭=都教委とGTECのホームページから)
区立中学校で英語を教えていた元教員の女性も「GTECそのものではないか」と言う。問題構成と問題傾向、採点基準を見て、「一緒だ」と思ったという。「民間のノウハウを生かすということは理解できるとしても、これでは共同開発とは言えない。丸投げと言われても仕方ないレベルなのでは? これだけ同じだと分かれば、中学校も保護者も生徒もGTECを練習のために受ける方向に動くと思う。都の責任で入試問題を作ることに信頼を置いてきたが、それは完全に崩れた」と話す。
九州地方の公立高校教員の男性は、2019年に行われた第1回のプレテストの内容と採点基準、結果の出し方を見て思った。「これはGTECだ」
「いずれ高校や地方にも波及してくるはず」と、ESAT-Jの動きを注視してきた。「GTECは、実態としてESAT-Jの模試にあたってしまうのではないか」と言う。