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22年度中学入試分析(後編) 二つの文章を関連づける出題や、記述式を増やした学校も

2022.03.23

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南雲 ゆりか
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2月1日から神奈川県と東京都の中学入試が行われました。多くの学校が例年通りの出題形式と内容でしたが、出題の仕方を少し変えた学校もありました。今回は、その中から、二つの学校の長文読解問題と記述問題をご紹介したいと思います。

二つの文章を関連させて出題する問題

大学入学共通テストでは、異なる著者による二つの文章から構成した問題が出題されています。中学入試においては、東京都立小石川中等教育学校などがずっと以前から採用している形式ですが、数年前から国・私立中でも見られるようになってきました。世田谷学園中学校の第1次入試でも、このタイプの問題が出題されました。

素材文は文章Aが酒井順子の「男尊女子」、文章Bが中村桃子の「『自分らしさ』と日本語」。文章Aでは、若い女の子が男の子のような言葉づかいをするのは、男女の関係に対してフラットな考え方を持っていることの表れであるととらえ、性差を感じさせる女言葉、男言葉が根付いていることは、男女平等を考えるうえでの枷(かせ)になるのではないか、という意見が述べられています。

文章Bは、少女たちが自称詞として「ぼく」「おれ」「うち」を使うのは、「わたし」を使うことで大人の女性として見られたくないのに、子どもでも大人の女性でもないアイデンティティーを表現する言葉がないからだと述べます。そして、言葉が人との関係をつくり、自分のアイデンティティーを形成するという考えを示します。二つの文章の切り口や内容は異なりますが、言葉とジェンダーの関係にふれている部分が共通しています。

文章Aが4800字強、文章Bが1700字強と長いうえに、似た内容が含まれるので、どちらに何が書いてあったのか、少し混乱します。一つの文章だけの問題よりも情報の整理がややこしくなるといえるでしょう。

それぞれの文章の内容について別個に問う設問がほとんどですが、次のように関連づけた設問もありました。

イラスト1EduAWeb-202203-1

文章Aに戻って傍線④の周辺を確かめた後に、文章Bから答えを探す必要がありますから、手間がかかります。それぞれの文章の内容をすばやく整理し、要点をつかむ力が求められます。

こうした二つの文章を関連づける問題は、筑波大学付属中学校、国学院大学久我山中学校、浅野中学校、横浜雙葉中学校などでも出題されています。昨年度よりも出題する学校が増えました。

記述式の問題を増やした学校

次に、記述問題の出題数を増やした学校を挙げてみます。20年以上前は、記述問題中心の入試問題は少数派で、記述問題を一問も出さない学校も普通にありました。でも、今は、記述問題を一切出さない学校は珍しくなりました。記述式の出題数をじわじわと増やしている学校も少なくありません。

頌栄(しょうえい)女子学院中学校の第1回入試では、去年は4問だった記述問題が7問になりました。記述問題の方が選択肢問題よりも難しいとは、一概にはいえません。素材文をほぼそのまま書き写すだけで済むような簡単な記述問題もあります。

しかし、頌栄女子学院が増やしたのは、そういう基本問題ではなく、素材文に直接書かれていないことを読み取る問題と、自分で具体例を挙げて考える作文型の問題です。もともと作文型の問題を1問出題していましたが、今年はそれが2問に増えたのです。

その作文型の問題を挙げてみましょう。

イラスト2EduAWeb-202203-2

素材文は、那須正幹の「めだかはめだからしく」です。主人公の「おれ」が自分よりも力の強い者のご機嫌取りをする一方で、クラスの女子や下級生に乱暴なふるまいをする描写があります。

設問文だけで200字を超えています。この手の問題では、設問文の読み取りが不正確なために解答要素不足になるケースがままあります。「問われていること」や「答え方の条件」を読み落とさないよう印をつけておきましょう。

まず、自分の使い分けている「顔」を具体的に説明するのですね。たとえば、「音楽クラブの部長として下級生に対してはしっかりした上級生としてふるまっているが、親しい友だちと一緒にいるときはおっちょこちょいな素の部分も見せている。」というような事例を挙げるとよいでしょう。

次に、「相手によって、求められる役回りが違うからそれに応じたふるまいをするのは自然なことだと考える。ただし、自分の信念を曲げて相手におもねるようなことはしないように気をつけたい。」など、自分の考えを述べます。あるいは、「人によって態度を変えてしまう自分がひきょうなように思えてしまうことがある。もっとしっかりとした信念をもって、誰にでも同じ態度で接することができるようになりたいと思う。」といった考えを述べてもよいでしょう。

頌栄女子学院は試験時間が40分と、一般的な試験時間よりも10分短いため、こうした作文問題も3分くらいで処理する必要があります。経験や考えを書く練習はもちろん、それを大人が添削して書き直すところまでやっておくと安心です。

以上のように、中学入試では要点を整理しながら長文を読む力や、具体的な経験や考えを素早く正確に書く力が、ますます求められるようになっています。塾の勉強だけでなく、日常的に「読み書き」や「対話」の機会を多く持つことをおすすめします。

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