都立高入試スピーキングの不可解

京都工繊大・羽藤由美教授「共通テストの英語民間試験が見送られた時、都は足を止めるべきだった」

2022.03.24

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石田 かおる
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新中学3年生が受ける東京都立高校の2023年度入試では、英語スピーキングテストが初めて実施されます。都が事業主体となり、ベネッセコーポレーションと「共同実施」するこのテスト。問題形式がベネッセの英語試験「GTEC」と酷似しており、公平性などを懸念する声が上がっています(記事はこちら)。CBT(コンピューターを使った試験)によるスピーキングテストとオンライン採点システムを独自に開発・構築した京都工芸繊維大学は、AO入試(総合型選抜)の一部や1年生の学年末試験で実施した実績を持ちます。プロジェクトリーダーの羽藤由美教授に、都立高入試の問題点を聞きました。(写真は、CBT方式のスピーキングテストを受ける1年生=京都工芸繊維大提供)

羽藤由美

話を聞いた人

羽藤由美さん

京都工芸繊維大学教授

(はとう・ゆみ) 1956年生まれ。専門は応用言語学。2012年から京都工芸繊維大学で、コンピューターを使ったスピーキングテストの開発・運営を統括。17年度からAO入試の一部に導入される。著書に『英語を学ぶ人・教える人のために――「話せる」のメカニズム』など。

「丸投げ」ではなく主体性に期待していた

──東京都のスピーキングテスト「ESAT-J」の現状をどうご覧になりますか。

スピーキングテストを開発してきた立場としては、民間事業者に丸投げするのではなく、東京都が主体となって独自に開発するテストを期待していました。今後の手本になるようなものが提示されることを願ってもいましたが、残念ながらそうはなっていないようです。教員や保護者、英語の専門家などから、テストの内容や運営方法についてこれだけ多くの懸念や疑念の声が上がっている状況では、実施することは難しいと思います。

──1回目のプレテストが実施されたのは2019年11、12月で、大学入学共通テストへの英語民間試験や記述式問題の導入が見送られた時期と重なります。「採点の公平性」への不安や、「事業者の利益相反」の疑念など、ESAT-Jと共通テストには重なる部分が多いと指摘する人も少なくありません。

共通テストと違って、受験料を受験者負担にしないことや、受験する試験が1種類であることは良い点だと思います。

一方、入学試験としてテスト自体の妥当性に疑問の声も上がっています。現にテストの内容がベネッセの英語4技能テスト「GTEC」に酷似しています。また、試験問題の作成に携わる事業者がスピーキングテストの教材販売や受験指導を行っていることについて「利益相反ではないか」との疑念の声も上がっています。いずれも共通テストに導入されることになっていた英語民間試験に対して指摘されていた問題で、実施が見送られた時点で、都は一度足を止めるべきでした。

──ESAT-Jは22年11月27日に実施され、翌年1月中旬に生徒に成績票が渡される予定です。8万人の受験生の採点は、フィリピンで約45日間かけて行われます。しかし「スピーキングテストは採点者によるブレが生じやすい。短期間で公平に採点できるのか」という懸念の声が、2年前のプレテストのときから上がっており、その懸念は解消されていません。

都教育委員会が説明責任を果たさないなか、懸念や疑念は膨れ上がる一方です。スピーキングテストというものに対する誤解や偏見が増しているのも非常に残念です。私たちが大学で運営しているスピーキングテストにも、フィリピンの採点者が参加していますが、優れた資質を持った人も少なくありません。入念な採点者訓練をすることと専用に開発したオンラインの採点システムを使うことによって、信頼性の高い採点ができています。都のスピーキングテストくらいの内容や問題数であれば、適切な訓練を受けた採点者が100人もいれば、約45日間で無理なくできると思います。

ただし一番の問題は、実際にどのように採点が行われているのかがブラックボックスになっていることです。例えば、ESAT-JのPart BはGTECと同じく、イラストを見て質問に答える問題です。機械にキーワード採点させていても不思議でない、むしろ機械採点を前提に作られた問題のように見えますが、都教委は2人体制で採点していると言っています。そうなると都教委の言葉を信じるしかなく、客観的に確認する手立てはありません。

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