学習と健康・成長
伝統芸能は「想像力を働かせて楽しむ」 子どもと一緒にまずは体験から
2022.05.06

正解がない中、試行錯誤して自分の技を会得していく
伝統芸能に触れることには多くのメリットがあるとはいえ、突然習い事として選ぶには敷居が高いと感じる人も少なくないでしょう。それに対して、倉持さんは「まずは夏休みなどの長期休暇で、親子で鑑賞できる親子鑑賞会などから気軽に参加するのがいい」と言います。
子どもや親子を対象にした参加型のワークショップのひとつ、「こども芸能体験ひろば」(主催・東京都、東京都歴史文化財団、こども芸能体験ひろば実行委員会)は、落語、和妻、狂言、三味線、日本舞踊などの体験プログラムを実施しています。主な参加者は小学校低学年で、興味・関心を持つ小学校高学年も少なくありません。プログラムの事務局を務める日本芸能実演家団体協議会の宮川祐文さんは、プログラムの狙いについて次のように語ります。
「伝統芸能は見てみたい、習ってみたいけれど、敷居が高いと思われがちです。『こども芸能体験ひろば』では、講師がクイズ形式で問いかけるなど、子どもが飽きないように、けれども短時間で、伝統芸能の特徴や楽しさを味わえる工夫をしています」
「子どもは、“正解かどうか”を気にしますね。プログラムに参加する子もそうですが、伝統芸能の世界は、こうしなさい、ああしなさいとは教えません。もちろんあいさつのほか、最小限の型(所作)は教えますが、正解がないところは講師の真似をしながら、自分で試行錯誤して見つけていく時間を大事にしています」(以上、宮川さん)
体験後の子どもたちの感想は、「大変だった」、「すごかった」など、感覚的な言葉が並びますが、宮川さんは「それでいいのだ」とうなずきます。
「あえて言葉にしなくても1時間後には、きれいな所作が自然と身に付き、背筋がぴんと伸びるようになります。例えば、両膝をついたおじぎで子どもたちが思い浮かべるのは、土下座して平謝りするイメージ。でも、ワークショップを通じて感謝や相手を敬う気持ちを伝えるためのおじぎがあるのだと、体で分かるようになるのです」(宮川さん)

「こういう日本の文化を子どもの頃に体験しておくと、大人になってからひょんなことで思い出し、親しみがわいてくることも。そういう時間を大切にしてくれればと思っています」(宮川さん)
古くから数々の人の手によって受け継がれてきた日本の伝統芸能。見る側が想像力をふくらませ、演じる側と一体となって舞台を完成させる鑑賞体験は、現代のアニメやドラマなどでは得られない面白さがあります。まずは保護者も一緒に観て、体験することから始めてみてはいかがでしょうか。
(編集:ゆきどっぐ+ノオト)