ピアノの力

ピアノが教えてくれる、本当に大切なもの(上) 習うことで身につく力とは?

2022.04.28

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大内 孝夫
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②   非認知能力が鍛えられる?

次に「非認知能力」についてです。最近、特に幼児教育においてその重要性が強調されるようになりました。言葉の目新しさに「なんだ、なんだ?」と関心が高まっていますが、IQ(知能指数)や英数国理社などのように点数評価できる能力と、それ以外に分類しただけで、前者が「認知能力」、後者が「非認知能力」です。

これまで「認知能力」は受験の得点源になるため重視されてきました。しかし、社会に出て本当に必要な能力は、むしろ非認知能力です。それは就活で面接(大半が非認知能力を試す試験です)が重視されていることからもわかります。親御さんの、勉強ができて「いい学校」に合格させたい、との気持ちは今も昔も変わりませんが、「いい学校」を出ても社会人として、いわゆる「仕事ができるヤツ」になるとは限らないのも、実はちっとも変わっていません。

曲がりなりにも銀行員を30年やってみて、役職についた人たちを見てみると、「非認知能力が高いな」と思う人ばかりです。その意味でも非認知能力を育むことはとても大切ですし、その際、ピアノは非常に大きな学習効果を発揮します。

一言で非認知能力といってもさまざまな能力があり、前出の拙著では13に分けて説明しています。ここではその中からコミュニケーション能力、責任感、ダイバーシティー性の三つを取り上げてみたいと思います。まずコミュニケーション能力。近年は近所付き合いも少なくなり、お子さんが身内以外の大人と1対1で接する機会は、ほとんどなくなりました。その中でピアノレッスンは、小学校に上がる頃になるとマンツーマンが基本ですから、30も40も年上の先生と1対1で接します。そのため自然にコミュニケーション能力が鍛えられます。同時に礼儀正しさや言葉遣いも教わりますから、小学校や中学校受験の面接にもとても有利です。

次に責任感ですが、これは下の写真が雄弁に物語っています。発表会やコンクールでは、このように小さなお子さんでも多くの大人たちの前に立ち、自らの責任を果たそうとします。またこうした発表の場をひとつのプロジェクトと考えれば、プロジェクト管理力も身に付くと考えてよさそうです。

ピアノの発表会の舞台に立つ子ども=大内孝夫さん提供
ピアノの発表会の舞台に立つ子ども=ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)提供

最後にダイバーシティー性。あまり聞き慣れない言葉でしたが、最近盛んにその必要性が叫ばれるようになりました。性別、国籍、人種、宗教などさまざまな立場の違いを認め合う取り組みですが、ピアノを習っている子にはほとんど必要ありません。元々、音楽には高いダイバーシティー性があるからです。「音楽は世界の共通語」ですし、コンクールもスポーツと違い男女の別なく競います。おのずと「男か女か」ではなく「誰がショパンを一番うまく弾けるか」に関心が向いています。その意味で、ピアノは今の企業が求めながら、なかなか育てられないダイバーシティー人材の育成に最も適した習い事と言えます。

③    「真摯さ」が身に付く?

最後はピアノが教えてくれる、人の上に立つ人間にとって最も大切な資質についてです。「真摯さ」――辞書を引くと真面目、熱心、ひたむき、誠実などの言葉で説明されていることが多いのですが、「経営学の父」といわれるP.ドラッカーが、組織のマネジメントを行う上で最も重要な根本的資質と指摘した「真摯さ」(integrity)の説明としては不十分です。

その意味するところは、彼の代表作「マネジメント」の内容をまとめると、「公正な判断基準を有する高い倫理観」と「これが最高という限界がない、より高度な崇高さを追い求める力」を兼ね備えた資質といったところでしょうか。

数値や論理ではその答えを見いだすのは困難ですから、今のようなAI(人工知能)全盛時代にこそ必要な資質です。ピアノのレッスンでは、おざなりな練習や小手先の技は、すぐ先生に見抜かれてしまいます。そうならないよう日々努力を積み重ね、発表会では「答えのない最高」を求めて自分の力を出し切ります。その中で身に付ける「真摯さ」は、ピアノが子育てにもたらす最高の贈り物ではないでしょうか。社会人になり、さらに組織のリーダーになった際、とても大きな力を発揮するはずです。

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