都立高入試スピーキングの不可解
スピーキングテスト、「タブレット端末『使い回し』に懸念」 都教委に市民らが公開質問状
2022.05.20

今年11月27日に初めて実施される予定の東京都立高校入試の英語のスピーキングテスト「ESAT-J」。問題点が多いと指摘してきた「入試改革を考える会」が5月17日、東京都教育長あての公開質問状を出しました。また、この日は研究者らが呼びかけ人となった「都立高入試へのスピーキングテスト導入中止を求める緊急アピール」も都教育委員会に提出され、ともに都庁で会見を開きました。公開質問状は5月31日までの回答を求めています。(写真は東京都庁)
都教育長発言は「明確に矛盾」
ESAT-Jの事業主体は都教委で、ベネッセコーポレーション(岡山市)と「共同実施」する。これまでに3回のプレテストを行った。本来は昨年に「本番」の予定だったが、コロナ禍で1年延期となり、今年11月に初実施となる。
公開質問状は全15項目。ESAT-Jを受けなかった不受験者の扱いなどについて尋ねた。
4月30日付東京新聞の記事で、浜佳葉子・都教育長が「英語のスピーキングテストでは中学生にどんな力を身に付けてほしいか」との質問に「文法通りでなくても通じた、という成功体験や実感を持ってほしい」と発言したことについても取り上げた。昨秋行われたESAT-Jのプレテストの採点基準には、「語彙(ごい)や文構造及び文法の使い方」がある。公開質問状で「教育長の発言と採点基準は明確に矛盾している」として説明を求めた。

「同一問題・同一時間の原則を破る」
ESAT-Jで使うタブレット端末の「使い回し」についても疑問を呈した。
都教委は、3月30日に出したESAT-J実施概要(案)の中で、「事業者が用意するタブレット端末等を用いて、解答音声を録音する方式で実施する。また、受験者を前半実施組と後半実施組の2組に分け、タブレット端末を移動させる形式で実施する」と実施方法を示している。
これについて、「同一問題の試験を異なる時間に実施すべきではない。前半実施組と後半実施組に受験者を分けることは、問題漏洩(ろうえい)のリスクを高める」「複数の生徒で同一のタブレット端末を『使い回す』ことにつながるのであれば、(中略)後半実施組の解答に当たって不具合が生じた際に、前半実施組で記録したはずの音声データの保全で未回収が生じないか危惧が高まる」と指摘。
17日の会見で、「入試改革を考える会」の大内裕和代表は「入試における同一問題・同一時間の原則を破る大問題。同じ時間にやっても問題漏洩が起きる時代。そもそもこうした情報自体、現場にきちんと伝わっていないわけで、今の時期でこれは異常だ」と訴えた。
ESAT-Jは7月に申し込みが始まる。
プレテストの音声トラブルは「ゼロ」と都教委
実施方法について都教委は、朝日新聞の取材に「タブレットは複数で使える仕様になっている。使い回しはプレテストの時にも行っていた」と話す。「昨年の都内の公立中学生8万人を対象に実施したプレテストでは音声のトラブルや事故はゼロ。タブレットの複数使用は問題ない」
タブレットを1人1台にしないのは「リソースが限られているから」と説明する。テストは前後半の2回に分けて実施し、問題は同一のものを使用するが、担当者は「部屋を変えたり、動線を工夫したりすることで、問題漏洩などが起きないよう万全を期すので大丈夫だ」と話している。