一色清の「このニュースって何?」

誤入金問題で容疑者を逮捕、送検 → 刑事事件の流れを知っておこう

2022.05.27

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、山口県阿武町の誤入金問題をめぐる記者会見で頭を下げる花田憲彦町長〈左〉=5月24日、阿武町役場)

刑事事件と民事事件

5月18日、山口県阿武町から誤って振り込まれた4630万円を別の口座に振り替えたとして、田口翔容疑者が山口県警に電子計算機使用詐欺容疑で逮捕されました。これで阿武町の誤送金問題は刑事事件に発展しました。田口容疑者は20日には県警から山口地検に送検されました。

新聞記事やテレビのニュースでは、刑事事件がよくとりあげられます。犯罪は社会の脅威なので、多くの人が情報を共有して犯罪に備えることが必要になるためです。また、犯罪は人間ドラマという面もあり、人々が身近な関心を持ちやすいニュースだということもあります。

ただ、刑事事件で犯罪が確定するまでには、いろいろな段階があり、長い時間がかかります。その過程では、逮捕、送検、起訴、公判、判決、控訴、上告、再審など難しい法律用語が出てきます。こうした用語を正確に理解している人は意外に少ないように思います。みなさんの中にも「逮捕と送検と起訴」の違いや「警察と検察と裁判所」の違いや「留置場と拘置所と刑務所」の違いがわからない人がいるのではないでしょうか。今回は、ニュースを正確に理解するうえで必要な刑事事件の流れを説明したいと思います。

まず、「刑事事件」とは何かということですが、刑罰を定めた法律を犯した可能性のある事件のことです。罰則のある法律としては刑法が有名ですが、ほかにも覚醒剤取締法、銃刀法、商法などにも罰則があります。一般的な刑事裁判は、公判を開いて検察官と弁護士が論じ合って、裁判官が判決を言い渡します。こうした手続きは刑事訴訟法で決められています。

刑事事件に対して、私人と私人のトラブルは「民事事件」として処理されます。民事裁判では口頭弁論を開き、一般的に原告側と被告側の弁護士同士が論じ合います。そして裁判官が主に民法や商法を使って損害賠償金の支払いなどの手段で解決します。刑務所に入ったり罰金を払ったりという刑罰はありません。

刑事事件の疑いのある事案が発生すると、まず警察が捜査を始めます(政治家が関わっている事案などの場合には、例外的に検察が最初から捜査することがあります)。そして容疑が固まると、裁判所に逮捕令状を請求して、容疑者を「逮捕」します。逮捕とは身柄を拘束することで、警察署内にある「留置場」に入れるのが一般的です。ただ、容疑者ならすべて逮捕するわけではなく、証拠隠滅や逃亡の恐れがなければ、自宅から警察署に来てもらうなどして調べます。これを「任意捜査」といいます。

逮捕の次の手続きは、警察から検察に事件を送る「送検」です。逮捕している場合は「身柄送検」といいますが、逮捕していない場合は「書類送検」といいます。逮捕している場合、警察は逮捕から48時間以内に送検しなければなりません。送検後は形の上では検察の調べになります。そのため、送検されれば法務省が管轄する「拘置所」に移されるのが本来の流れですが、拘置所の収容能力が少ないことや引き続き警察が取り調べることが多いことから、送検後も留置場に入ったままということが多くなっています。

送検の次の段階は、検察が事件をどう処理するかの判断になります。身柄送検された場合、検察は送検から20日以内にその判断をしなければなりません。判断は大きく分けて「起訴」するか「釈放」するか、の二つです。釈放する場合には、「起訴猶予」「不起訴」「処分保留」という三つがありますが、いずれにしても釈放されれば事件は処罰なしで終わりになるのが普通です。

ただ、国民からくじで選ばれた11人で構成する「検察審査会」という機関があり、不起訴になった事件のうち申し立てがあった場合は、審査をします。そして、起訴すべきである(起訴相当)、さらに詳しく捜査すべきである(不起訴不当)、不起訴処分は相当である(不起訴相当)の三つのうちどれかの議決をします。起訴相当と不起訴不当の場合は、検察に戻して検察が再検討します。起訴相当とした事件を検察が再び不起訴とした場合は、検察審査会は起訴議決をして、起訴することができます。

起訴というのは、検察官が「この人はこんな罪を犯したので裁いてください」という起訴状を書いて、裁判所に訴えを起こすことです。新聞などのメディアでは、逮捕から起訴までは「容疑者」という呼び方だった人が、起訴されれば「被告人」という呼び方をされるようになります。起訴されれば、被告人は保釈金を積んで保釈される道がありますが、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると裁判所に判断されると保釈されず、拘置所に留め置かれる場合がよくあります。

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