都立高入試スピーキングの不可解
都立高入試スピーキングテスト 採点態勢は 不受験者の扱いは 点数の統計処理は妥当? 都教委に聞いた
2022.05.27

今年11月27日に初めて実施される予定の東京都立高校入試の英語のスピーキングテスト「ESAT-J」。事業主体は東京都教育委員会で、民間業者と「共同実施」します。ESAT-Jをめぐっては、採点態勢やトラブル発生時の対応、不受験者の扱いなど、公平性や公正性に対して疑念の声があがっています。都教委指導企画課国際教育推進担当に5月13日、疑問をぶつけました(写真は東京都庁)。
「採点に関わることはお話しすべきでない」
都教委は2016年の都英語教育戦略会議の提言を受けて、英語スピーキングテストの導入を決めた。ベネッセコーポレーション(岡山市)と協定を結び、事業主体は都教委、運営主体はベネッセという位置づけで「共同実施」する。採点はフィリピンで行うが、採点態勢などは明らかになっていない。
昨秋までに3回のプレテストを実施。専用のタブレット端末やイヤホン、耳を覆う防音具(イヤーマフ)を使い、生徒の解答を録音して採点する。昨年のプレテストでは、英文を声に出して読む問題や、4コマのイラストを見て、それぞれの場面について英語で話す問題などが出た。問題構成や評価基準などが、ベネッセの英語試験GTECと酷似しており、GTECの受験経験のある生徒が有利だとの指摘がある。
スピーキングテストの結果は、素点ではなく、IRTと呼ばれる統計処理をしたスコアで示され、さらにA~Fの6段階の「グレード」に分けて、それを20点満点で換算する。例えば、スコアで79点を取ったらグレードBで16点だが、80点だったらグレードAで20点となる。学力検査(700点満点)と調査書の点数(300点満点)に加えて、計1020点満点で合否を判断する。
スピーキングテストを受けなかった「不受験」の場合は、学力検査の英語の点数をもとに算出する。3月2日の衆議院文部科学委員会で、この点を尋ねられた末松信介・文部科学大臣は「何か釈然としませんですね」と答えた。

――都議会などでも、採点態勢について問われてきました。これまでの取材などで「企業秘密に関わる」として回答はありませんが、20年3月13日の都議会の質疑では、8千人を対象にした1回目のプレテストの採点者数は71人と回答しています。現在の態勢について改めて教えてください。
採点に関わることはお話しすべきではないと考えています。
――ESAT-Jの問題がGTECと酷似していることから、「GTECを導入している学校とそうでない学校とでは不公平になる」との声が、教員や保護者からあがっています。こうした状況をどう考えていますか。
それは市区町村が決めることです。市区町村に対して何か言える立場でもありません。
英語4技能(読む、書く、聞く、話す)の力を伸ばすのは、管理職の理解があり、ちゃんとアウトプットの機会を設ける授業をしているかどうかといった、組織的な取り組みが大きな要因です。これをやったら有利かどうか、ではなく、しっかりと授業を行うことが大事なのです。
20年6月にベネッセと結んだ覚書には「利益相反行為の禁止」の項目があります。ベネッセ本社と締結したものですが、関連する企業についてもベネッセ側が自主的に制限しています。ベネッセも都教委も、日常的にそうした行為がないかチェックしています。
――ESAT-Jの採点者が、ベネッセのGTECやオンラインスピーキング講座のフィリピンのスタッフとは重複していないかを都教委は確認していますか。
ESAT-Jの採点者は、ベネッセの責任において運営されているフィリピンの採点センターの常勤スタッフで、スピーキングテストの採点を行う専任であることを確認しています。採点者はESAT-Jに専従してもらいます。採点者は、ESAT-Jの専門の研修を受けており、採点の「癖」や「ぶれ」は出ないようにしています。
――専門家は、①解答の一部を都教委が採点して業者の採点と一致するかを点検したり、②ダミーの解答を紛れさせて採点の質を確認したりする――などして、公平、公正な採点ができているか、都教委が確認する必要があると言っています。
都教委は、採点がぶれないためのガイドラインの作成に関与し、採点に関する研修や採点結果をチェックする態勢など、公平・公正な採点ができる態勢であることを確認しています。採点品質を担保するノウハウに関わる部分については答えられません。採点については、都教委が全て把握し、監督しています。安心して下さい。
――英語の作問に関わっている専門家はどなたでしょうか。ESAT-Jの内容がGTECと酷似していることについて、専門家はどのように判断しているのでしょうか。
個人名は公表できません。ESAT-Jについては、都教委として責任を持ってやっている、ということです。