ピアノの力
ピアノが教えてくれる、本当に大切なもの(中) ピアノは受験の役に立つ! あなたの「強み」を作ろう
2022.06.07

習い事の多様化とともに人気に陰りが出ているピアノ。しかしピアノには、驚くほどの教育効果があります。その効果とはどのようなものなのでしょうか。名古屋芸術大教授の大内孝夫さんが、ピアノを習うことに秘められた力を3回に分けてお伝えします。
少しでもいい(偏差値の高い?)学校に入れたい、というのは多くの親御さんの願いだと思います。そのため、小さい頃には「心優しい子どもに育ってほしい」「音楽が身近な存在になれば豊かな人生になるはず」などとピアノを習い始めることが多い一方、小学校高学年あたりから、受験の邪魔だとやめるケースは少なくありません。ピアノ教育界では「小4の壁」「中2の壁」などと呼ばれます。
私も、優秀で期待していた生徒がその時期にやめて残念がる先生を数多く目にしてきました。しかし、やめてしまう一因は、ピアノの魅力や教育効果を先生方が十分に伝えられていない、あるいは先生ご自身が気付いていないことだと考えています。とりわけピアノは、受験に大いに役立ちます。具体的に、どう役立つのか? ポイントは次の三つです。
① 小・中学受験の面接に役立つ
② 内申書の点数アップに役立つ
③ 実際の受験で、演奏やその実績が使える
① 小・中学受験の面接に役立つ
ピアノに限らず、バイオリンなども、先生とのレッスンは基本的にマンツーマンです。定期的に、ずっと年上の先生と30分以上接しなければなりません。大人との接し方が自然と身に付きます。言葉遣い、礼儀、身のこなしなどが、いい意味で大人びてきます。
このことが、受験の面接で、強みになります。普通は、極度に緊張してうまく話せなかったり、言葉遣いがおかしかったりするものですが、ピアノを習っていると、いつもと変わらずに対応することができます。
ピアノの先生は、ご自身が言葉遣い、礼儀、身のこなしなどを身に付けられています。これを受験に活用しない手はありません。私はピアノ教室の先生向けセミナーなどで、「受験が近くなってきたら積極的に生徒さんの面接指導を行ってはどうか」と働きかけています。親御さんも、先生にレッスン時間の一部で、模擬面接をお願いしてみてはいかがでしょうか。

② 内申書の点数アップに役立つ
これは私自身も経験しています。難関の公立高校受験生は、みな成績がよく、オール5に近い成績が求められます。ひとつでも3があると厳しいケースもあるほどです。中学時代、私は音楽、美術、体育が苦手で、音楽と美術が2と3、体育が3と4の間を行き来していました。特に音楽は苦手で、どうやってもみんなと同じように歌えません。大声で音程を外すので、名字の「おおうち」をもじって「オンチ」と呼ばれる有り様でした。「お~い、オンチ!」などと呼ばれていたのです。今ではあり得ないでしょうが、時には先生からも……。
しかし、中2の時に大きな変化が起きました。転校先の音楽の先生が、授業後に「大内君、あなた音痴じゃないわよ。音程が低いだけよ」と言って、3度か5度音程を下げて(移調して)、弾いてくれたのです。すると、嘘のようにうまく歌えるではありませんか! それ以来、私は先生に音楽を学びたくて、音楽室に入り浸るようになりました。中学2年の2学期には音楽の成績が一気に5になり、その影響もあってか、美術は3、体育は4で、ギリギリ(多分)志望校に合格できたのです。
今は公立中高一貫校もありますが、内申書が重要であることに変わりはありません。その際、音楽の成績はおろそかにできませんので、ピアノを習うことは、大いにアドバンテージになります。