性教育と向き合う

子どもの性教育、保護者はどう向き合う 「自分のからだは大事」を土台に他者への理解育む

2022.06.07

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岩波 精
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来年度から全国の小中高校で、子どもを性被害から守るための「生命(いのち)の安全教育」が始まります。国が教材や指導の手引を作り、就学前の幼児も対象となっています。文部科学省は「家庭でも参考にしてほしい」と呼びかけていますが、親はどう向きあえばいいのでしょうか。幼児や小学生向けの性教育を実践している私立和光小学校・和光幼稚園(東京都世田谷区)の校園長、北山ひと美さんに聞きました。(写真は、和光小学校で性教育の授業をする北山ひと美さん=同校提供)

北山ひと美

話を聞いた人

北山ひと美さん

私立和光小学校・和光幼稚園校園長

(きたやま・ひとみ)お茶の水女子大卒。和光幼稚園、和光小、和光鶴川小の教諭を経て、2014年から現職。一般社団法人“人間と性”教育研究協議会(性教協)幹事、性教協乳幼児の性と性教育サークル代表。共著に「あっ!そうなんだ!性と生」(エイデル研究所)、「乳幼児期の性教育ハンドブック」(かもがわ出版)、監修に「性ってなんだろう?」5巻シリーズ(新日本出版社)がある。

幼児には「プライベートパーツ」絵本で教える

――和光小・幼稚園ではどのような性教育をしていますか

基本的な考え方は小学校も幼稚園も同じで、「自分のからだというのはとても大事なものだ」という感覚を育みたいと考えています。人との関係を築く上で、欠かせない学習です。

からだが大きくなること、できなかったことができるようになることは、幼児期の子どもにとって、とてもうれしいものです。そのうれしい気持ちを味わいながら、そのなかで、自分のからだは大事なもので、自分じゃない人も大事だとわかっていきます。自分と相手とのつきあいかたがわかるようになり、心地よいつながりが身についていく。それが基本的に大事なことです。

幼稚園では「からだのはなし」として、年長組(5歳児)で毎年6月ごろに3回にわたってからだのことを学びます。絵本を使い、男女の性器の違いを説明し、からだには性器やおしり、口といった「プライベートパーツ」(水着で隠れるプライベートゾーンと口)があることを伝えています。からだ全体が自分のもので、他人が「いやなタッチ」をしたときには、声を上げていいよと伝えます。からだについては話をするだけではなく、状況に応じて子どもたちと話し合いをしたり、絵本の読み聞かせをしたりするなど、日常的に取り組んでいます。

3歳から4歳ぐらいの子どもは、自分のからだがどうなっているのかと興味を持つとともに、自分以外の人のからだ、異性のからだがどうなっているのか知りたいと思うようになります。

お友だちが着替えている最中に、目隠し用のついたてを倒すという出来事もありました。また性器を見る、触ることを、物陰に隠れて行うこともあります。

他人のからだを見たい、触りたいという気持ちが出てくるのは、発達の段階として自然なことです。頭ごなしに「ダメだよ」と否定するのではなく、相手の気持ちを考えるよう促して、子ども同士の話し合いの場を作るようにしています。また、された側には「いやだって言っていいんだよ」と話すとともに、子どもたちには「からだって大事だよ」というメッセージを伝えます。

からだを知り、気持ちを表現することばを知ること、その繰り返しのなかで、子どもたちは「からだを大事にする」とはどういうことなのかを身につけていきます。それが、他者を理解していくための土台となり、ぶつかり合ったときに折り合いをつけることもできるようになります。

和光小学校では全学年で「からだ・こころ・いのちの学習」として学んでいます。

子どもたちが成長するなかで、とりわけ思春期に向かっていく時期にはからだの変化に対する戸惑いが生まれることがあります。でも、からだが大人に向かって変化していくことはすてきなことだと伝えたいのです。

子どもが知りたいと思うことはたくさんあります。自分のいのちってどこから生まれてきたのか、からだはどんなふうに変化していくのだろう――そういう疑問に、誠実に応えることが性教育の中心になると考えています。発達年齢に応じて、伝え方は変わってきますが、性交や受精を含めた科学的な知識を、必要なときに伝えることが大切です。自分のいのちに関わる真実がわかることは、この後の生き方につながる大事なことです。

子どもは、自分自身が大切にされる経験を重ねることで、ほかの人も大切にしようと思うことができます。保護者にも、子どもを大事にするとはどういうことか、折に触れて伝えています。大事にするというのは、子どもの気持ちをくみ取り、願いに寄り添っていくことであり、「いけないことはいけない」と教えるけれど、その方法はたたいたり怖がらせたりすることではなく、子どもが納得できることばで伝えるということ。大事にされている子どもは安心して毎日の生活を送ることができ、その中で自分っていいな、と思えるようになる、つまり自己肯定感が育ち、周りの人たちのことも大事にすることができるようになります。

また、性教育の内容についても保護者に伝えています。保護者自身が性教育を行うことの意味を理解し、子育ての中でもそのような視点を持ってほしいと願っているからです。

和光幼稚園では絵本を使って「からだのはなし」を伝えている
和光幼稚園では絵本を使って「からだのはなし」を伝えている
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