学習と健康・成長

「感覚過敏の人も暮らしやすい社会を」12歳で親子起業、アパレルブランド展開の道のり

2022.06.15

author
小林 香織
Main Image

高校2年生の加藤路瑛さんは、12歳のとき、母の咲都美さんと一緒に「株式会社クリスタルロード」を創業しました。感覚過敏の当事者として悩んだ実体験から、感覚過敏の課題解決を目的に事業を展開。感覚過敏の研究や啓蒙活動のほか、感覚過敏の人向けアパレルブランドを立ち上げ、洋服の販売もしています。現在までの道のりを加藤さんに聞きました。(写真は起業準備をする加藤さんと母の咲都美さん=クリスタルロード提供)

Jiei_Kato

話を聞いた人

加藤 路瑛さん

株式会社クリスタルロード 代表取締役社長

(かとう じえい)2006生まれ。角川ドワンゴ学園 S高等学校に通う高校2年生。クラウドファンディングで115万円を調達し、12歳で親子起業スタイルで起業。創業時の子ども起業・親子起業の支援を経て、現在は感覚過敏の啓発、対策商品の企画・開発・販売、感覚過敏の研究を主に行う。その一環で、感覚過敏課題解決型アパレルブランドKANKAKU FACTORY(カンカクファクトリー)を立ち上げ、企画・デザインから生産・販売の総合プロデュースを担う。

給食が食べられない。服が着られない

――加藤さんは感覚過敏に関連した事業を展開しています。当事者として、どんな悩みがあるのでしょうか?

感覚過敏とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの諸感覚が過敏で、日常生活に困難さを抱えている状態をいいます。感覚過敏は病名ではなく症状です。発達障害の人に多く見られますが、うつ病、認知症、脳卒中、てんかん、交通事故による脳へのダメージ、HSP(※)などの症状としても見られます。

※HSP……Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字で、生まれつき感受性が強く、人一倍敏感な気質がある人を指す。

僕自身は、視覚を除いた聴覚、嗅覚、味覚、触覚の4つが過敏で、学校生活では「シャープペンシルを押すカチカチという音」、「女生徒の甲高い声」、「給食のにおいや味」などに長く悩まされてきました。小学生のときは感覚過敏という言葉を知らず、自分の感覚をうまく言葉で表現できなかったのですが、ひんぱんに具合が悪くなり、週2回は保健室で休んでいました。

一番ツラかったのは、給食をほとんど食べられないことでした。味覚過敏の影響で、小学1年生の初めての給食で戻してしまい、そこからほとんど食べられない日が5年生まで続きました。修学旅行などで出される食事も食べられず、5年生の修学旅行で脱水症状と栄養不足で倒れてしまい……。「成長期にこの状態は良くない」と6年生時の担任の先生が校長先生に相談してくれ、お弁当の持ち込みが許可されました。

親子起業_1
感覚過敏の当事者である加藤さん。レストランやカフェの雑音、においも苦手だそう

そんな背景から中学校は給食のない私立中学に進学しました。それでも、いろんな人のお弁当のにおいが混ざる教室で食事をするのが難しく、急いで食べて教室を出て行くしかなくて……。相変わらず保健室で休むことも多く、当時の保健の先生に相談したところ、「感覚過敏ではないか」と言われました。調べてみたら当てはまることばかりだったんです。そこで初めて、「僕の症状は感覚過敏だったんだ」とわかりました。

その他に、洋服の縫い目やタグが肌に当たって痛いという悩みも。おしゃれをしたくても、市販の洋服はなかなか着られないし、靴下も履けません。感覚過敏は病名ではないことから統計はありませんが、論文などでは発達障害の人のうち95%に感覚過敏があるといわれています。

バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ