東大生と起業

東大・各務茂夫教授 「優秀な東大生は意識してスタートアップに行く」

2022.06.09

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中村 正史
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「アントレプレナー(起業家)」という言葉を聞くことが増えてきました。政府は産業を創出するスタートアップ企業の育成に力を入れており、大学発スタートアップの設立数でトップを走るのが東大です。かつてのような中央官庁や大企業にキャリアを託す東大生の意識も変わっています。20年近く東大のアントレプレナーシップ教育やスタートアップ支援を担ってきた各務茂夫・東大大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)に、東大出身者の起業の現状や、東大生の意識の変化を聞きました。(写真は東大発スタートアップの一つ、ロボット技術を活用した義足を開発しているBionicMのメンバー©越智貴雄/カンパラプレス)

各務茂夫

話を聞いた人

各務茂夫さん

東京大学大学院工学系研究科教授、同大産学協創推進本部副本部長、一般社団法人日本ベンチャー学会会長

(かがみ・しげお)一橋大学商学部卒、スイスIMEDE(現IMD)経営学修士(MBA)、米国ケースウェスタンリザーブ大学経営学博士。ボストンコンサルティンググループを経て、コーポレイトディレクション(CDI)の設立に創業パートナーとして参画。取締役主幹、米国CDI上級副社長兼事務所長を歴任。2002年、東京大学大学院薬学系研究科「ファーマコビジネス・イノベーション講座」教員となり、04年、同大産学連携本部(現・産学協創推進本部)教授・事業化推進部長。04~13年、東京大学エッジキャピタル監査役。13~20年、同本部教授・イノベーション推進部長、20年4月から現職。

「起業」に大半を割いた総長の入学式式辞

――社会連携に携わってきた藤井輝夫・東大総長が2021年4月の就任以来、産学協創や起業を積極的に発言しています。

藤井総長は今年の入学式で、式辞の大半を起業のことに割き、「なぜ私たちはいま、起業にスポットライトを当てているのか」「本学での起業をめぐるポジティブな語りと対話の輪のなかに、一歩足を踏み出してみてください。そこにはきっと、教室での学びとはまた違った新しい世界が広がっているはずです」と新入生に語りました。東大の入学式で起業を前面に出して語られたのは、初めてでしょう。

東大の入学式で式辞を述べる藤井輝夫総長=2022年4月12日、東京都千代田区の日本武道館、細川卓撮影
東大の入学式で式辞を述べる藤井輝夫総長=2022年4月12日、東京都千代田区の日本武道館、細川卓撮影

――東大は05年にアントレプレナー道場を作り、起業家教育を続けてきました。起業した卒業生も多いですが、起業数は増えていますか。

卒業生の起業を含めた東大関連スタートアップ企業は、毎年30~40社が設立されており、これまでに470~480社にのぼります。アントレプレナーシップ教育やスタートアップ支援事業も広がりを持ってきています。

――コロナ禍のこの2年間で変化したことはありますか。

オンライン教育に切り替わり、教場の収容キャパシティーに制約を受けないこともあって、結果として教育プログラムに参加する受講者が増えました。また、スタートアップ育成が「スタートアップ・エコシステム」という言葉で表現されるように、多くの大学やアクセラレーター(起業家の支援事業者)、大企業、自治体などを巻き込んだ形での面的な広がりを持つようになったことが、この2年の大きな変化です。

内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」が始まり、20年に東京など四つの拠点都市が選定され、その延長で文科省・科学技術振興機構(JST)の「大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援」事業が始まりました。

拠点都市のうち、東京都や大学、企業などで作る「東京コンソーシアム」では、東大、東京工業大、早稲田大を主幹機関に、全部で80を超える共同機関・協力機関と連携して、GAPファンド(大学が研究室に供与する事業化資金)を核とする起業活動支援やアントレプレナーシップ教育を行うGTIE(Greater Tokyo Innovation Ecosystem)プログラムが22年度から本格的に始まりました。

東大では、21年度末までの5年間、EDGE-NEXTプログラムを展開し、主に研究者を対象に、研究シーズ(新たな産業を生み出す芽となる研究)の事業化を目指すアントレプレナーシップ教育を行ってきましたが、これがGTIEによって大学の広がりを持つようになりました。

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