「大学付属校」の現在地
「付属校ならどこでも」は危険 それぞれのカラーを理解して 慶応中等部出身の齊藤美琴さんに聞く
2022.06.13

大学付属校に進むメリット、デメリットは何なのでしょうか。また、どんな子が付属校に向いていると言えるのでしょうか。自身も中学から慶応で、付属校を含む中学受験の指導を続けてきた家庭教師、齊藤美琴さんに聞きました。(写真は、慶応義塾女子高の入試に向かう中学生たち=2019年2月10日、東京都港区)
さいとう・みこと/中学受験のコーチングをメインに、教科指導、幼・小学校受験の相談など、家庭の力を引き出すレッスンを行う。サピックスの個別指導部門プリバート東京教室での国語科専任、ジャック幼児教育研究所(四谷教室)での講師を経てフリーランスとして独立。読解トレーニングときめ細かい学習コーチングに定評がある。自身も黎明期(れいめいき)のサピックス生として中学受験を経験し、慶応義塾中等部から慶応義塾女子高を経て慶応義塾大へ進学。webサイト:PICCOLITA
学校のカラーが家庭の方針に合うか
――大学付属校の人気は高止まりしています。
大学入試改革による焦りがあるのでしょう。でも、「本当に付属校がいいと思っているの?」と感じるケースもありますね。最近よく聞くのは、子ども自身が「中学入試が終わったらもう受験をしたくない」という「逃げ」の姿勢から、付属校を選ぶという話。中学受験が厳しくなり、やってもやっても成績が伸びない。最近は子ども自身に「自走」や「自覚」を求める風潮もあり、精神年齢が高い子ほど受験が「自分事」になっています。そういう子は「大学受験でまたこれをやるのは嫌だ」と感じるのでしょう。でも、大学受験がないから、ではなく、その学校の魅力を理解して選んでほしいと思います。
付属校はどこも同じに見えるかもしれませんが、それぞれのカラーがあります。同じ大学の付属校でも、たとえば明治大付属中野と明治大付属明治では校風が異なります。付属校の中でも、特に小学校のある学校はカラーが強め。しかも、在校生や保護者、教師など中の人たちは一貫校であることにプライドを持っています。学校への「熱量」が違う状態で入ると、入った後にギャップを感じることになってしまいます。願書に志望動機を書かせたり面接があったりする学校は、その学校に合う子がほしいのです。たとえ願書や面接がなかったとしても、学校のカラーが家庭の方針とハレーションを起こさないか確認してください。
それぞれの学校の建学の精神は、ホームページやパンフレットでも確認できます。本当は実際に学校に足を運んでほしいのですが、コロナ禍で難しくなっています。その場合は、実際にその学校に通っている人に聞くか、塾に相談してください。塾への質問の仕方も大事です。塾の先生が子どものことをどこまで理解しているかは分からないので、「うちの子にはどこが合いますか」より「この学校はどんな校風ですか」「この学校とこの学校の違いはどこですか」というふうに聞いた方がいいです。学校の合同相談会に行く機会があれば、「複数ある明治大付属の中で、この学校にはどんな特長がありますか」などと聞けば、きっと答えてくれるでしょう。
――大学受験がないということ以外に、どんなメリットがありますか。
まず、カリキュラムに大学のリソースが入ってくることです。大学の先生が第二外国語や教養科目を教えてくれたり、キャンパスが同じ場合は大学の施設を使えたりもします。
受験を意識しない独自のカリキュラムにも特色があります。修学旅行のリポート30枚とか、原稿用紙80枚の小説とか、時間をかけて取り組むユニークな課題も多くあります。
また、受験がないということは、中高時代の「今の時間」を大切にできるということです。行事に思い切り取り組めるし、部活も高3の最後まで続けられます。例えば母校の音楽系の部活は、定期演奏会が3月にあるものが多く、卒業まで「引退」はありませんでした。