一色清の「このニュースって何?」
参議院議員選挙が公示 → 参議院って必要なの?
2022.06.24

日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、候補者らの第一声を聞く人たち=22日午前10時45分、東京都内)
参議院はどんなところ?
第26回参議院議員選挙が6月22日、公示されました。7月10日に投開票されます。参議院議員の任期は6年ですが、3年ごとに半数が改選される仕組みなので、今回は参議院議員の半数を選ぶ選挙となります。
昨年秋には、総選挙ともよばれる衆議院議員選挙がありましたので、「また選挙か」くらいにしか思わない人もいるでしょうが、参議院選挙の結果次第では憲法が変わったり予算の配分が大きく変わったりするかもしれません。まだ選挙権を持っていない小中高生にも選挙に関心を持ってもらいたいと思いますが、その前に参議院はどういうところなのかを知っておいてもらう必要があります。
日本の国会には衆議院と参議院というふたつの議院があります。こうした国会のあり方を二院制といいます。世界には一院制の国と二院制の国があります。列国議会同盟(IPU)の調べでは、2021年12月末時点で世界190カ国中一院制の国は111カ国、二院制の国は79カ国です。二院制の国のほうが少ないのですが、人口の多い主要国では二院制をとっている国が多く、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、日本の主要7カ国(G7)はすべて二院制です。ただ、ヨーロッパの国の中でも北ヨーロッパのデンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどは一院制ですから、「先進国は二院制」というわけではありません。
日本は、大日本帝国憲法のもと1890(明治23)年に初めて国会が開かれた時から二院制をとっています。日本がお手本にしたイギリスやドイツが二院制だったためです。当時は貴族院と衆議院の二つがあり、貴族院議員は公の選挙で選ばれるのではなく、皇族や貴族の中などから選ばれていました。1947(昭和22)年に日本国憲法が施行され、貴族院はなくなり、普通選挙で選ばれる議員で構成される参議院が生まれました。
二院制のいいところはふたつあります。ひとつは多様な意見が国会に反映されることです。衆議院議員は狭い地域の選挙区から選ばれるため、基本的にその地域の代表という意味あいが強くなりますが、参議院議員は都道府県や全国を単位に選ばれ、任期も6年が約束されているため、地域の利害にとらわれない大所高所からの意見が出やすいとされています。ちなみに衆議院議員の任期は4年ですが、しばしば国会が解散されるので、2~3年で次の選挙を迎えることが多くなっています。
もうひとつは、議院がふたつあることによりチェック機能が働き、議案を慎重に処理できることです。議院がひとつなら、与党が暴走すれば止められませんが、ふたつなら議員構成が異なっていたり、議論に時間がかかって世論の動向が反映されやすくなったりして、与党の暴走をチェックできる可能性があります。
一方、一院制のいいところも二つあります。ひとつは二院制と逆で、議案の処理が迅速にできることです。もうひとつは、二院制よりお金がかからないことです。人口の多くない国では、こうした効率を求めて一院制をとっています。