東大生と起業

タクトピア・長井悠さん「探究の学びとアントレプレナーシップ教育」

2022.06.27

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中村 正史
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「アントレプレナー(起業家)」という言葉を聞くことが増えてきました。大学では、起業家教育やスタートアップ支援に力を入れる動きが広がっています。一方、高校では探究の学びの一環としてアントレプレナーシップ教育が注目されるようになってきました。国内でいち早く、この分野の教育に取り組んできたタクトピアの長井悠代表取締役に、高校でのアントレプレナーシップ教育をどうとらえるべきかを聞きました。(写真は、米マサチューセッツ工科大学から招かれた大学生からグローバルな課題のレクチャーを受け、解決策を話し合う高校生たち=タクトピア提供)

長井悠

話を聞いた人

長井悠さん

タクトピア株式会社代表取締役

(ながい・ゆう) 東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程修了。日本IBMに戦略コンサルタントとして勤務後、2010年ハバタク株式会社設立。同社の一部門だった学校向け教育事業を切り離し、15年タクトピア株式会社を設立。

水面下の豊かな裾野が必要

――タクトピアはアントレプレナーシップ教育にいち早く取り組み、その教育プログラムが経済産業省の教育改革プロジェクト「未来の教室」実証事業に2018年度から3年連続で採択されています。大学では起業に向けての支援や教育プログラムを提供するところが増えていますが、高校と大学ではアントレプレナーシップ教育をどう位置づけるのかが違うように思います。

タクトピアを設立した15年から、主に高校向けにアントレプレナーシップ教育のプログラムを提供してきました。この分野では、国内では一番早いと思います。

大学と高校との違いは、氷山に例えるとわかりやすいです。最終的に起業して新しい産業を生み出す方法を具体的に教えるのは、大学以降でいいと私は考えます。起業が水面から顔を出して目に見えるのは大学以降ですが、そのためには水面下の豊かな裾野が必要です。それが高校や中学での教育で、課題を発見し解決していくことや、自分の意見を言えること、課題に気づくアンテナを立てることが求められます。

大学と高校の教育で求められるものは別物ではなく、段階的につながっています。米国のグーグルのような新しい産業を生み出すには、裾野が広がっていなければなりません。この土壌をつくっていくには、生徒たちのマインドセットを変えることが必要です。

――タクトピアはどんな取り組みをしてきたのですか。

会社を設立した当初は、学校とも連携し、海外研修に力を入れ、起業が盛んな米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)に中高生を連れていき、交流や起業アイデアのプレゼンテーションをしました。新型コロナが広がった20年以降は海外に行けなくなり、学校内でアントレプレナーシップ教育を行うところが増えてきました。さらに、22年度の高校1年から新学習指導要領が実施され、「総合的な探究の時間」が始まることになっていたので、この2、3年で高校側は探究の学びの一環として、アントレプレナーシップ教育をとらえ始めています。

PBL(課題解決型授業)の中に取り入れたり、土曜講座として行ったりしている学校もあります。

日常の授業の中で英語やアントレプレナーシップを学び、長期休暇期間に海外研修や国内キャンプに参加してもらうような、複合的な学びのデザインをすることが多いです。

海外研修で米スタンフォード大学を訪問し、同大学教授の話を聞く高校生たち=タクトピア提供
海外研修で米スタンフォード大学を訪問し、同大学教授の話を聞く高校生たち=タクトピア提供

――どんな高校が積極的ですか。

タクトピアが教育プログラムを提供している学校は、教育ビジョンや育てたい人物像を刷新したところが多いです。自ら行動でき、予測困難な21世紀の社会に貢献できる人を育てようとしています。

アントレプレナーシップという言葉は、一般的に浸透しているわけではないので、表立って教育の方向性としてとらえている学校は少ないです。そうではなく、社会との接続を強化する教育をしようとした時に、一つの手段としてアントレプレナーシップ教育に出会った学校が多いです。

それらの高校の中には、「テスト勉強がうまくできない」という中高生の悩みに対処するため、学習計画書をつくり、LINEを活用して勉強を支援するプログラムを生徒2人でつくったなどの事例があります。

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