東大生と起業

「生理ケアを社会的責任に」と起業 東大大学院で都市工学を研究する髙堰うららさん

2022.06.28

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中村 正史
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中央官庁や大企業にキャリアを託してきた東大生の志向が変わり、起業したり、スタートアップ企業に入ったりすることが一つの選択肢になっています。東大の起業家教育や起業支援を担ってきた各務茂夫・大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)は「優秀な東大生は意識してスタートアップに行っている」と言います(記事はこちら)。東大発スタートアップの起業家たちを取材すると、日本の変化が見えてきます。(写真は、オモテテの髙堰うららCEO)

ヘルスケアのプラットフォーム目指す

東大大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程に在籍する髙堰(たかせき)うららさん(24)は2021年10月、「Omotete(オモテテ)」を設立した。誰もが生理の時でも安心して出かけられるように、生理用品の入ったボックス型装置を商業施設や会社のトイレに設置する事業を進めている。利用者はアプリで設置場所を調べ、画面上で操作して生理用品を取り出せるようにする。利用状況や生理用品の補充の必要性は、遠隔で管理する。すでに百貨店や不動産会社などから引き合いが来ており、今年度内に多数の施設に設置できる見込みになっている。

サービス名は「unfre.(アンフリ)」。「不自由(unfree)にピリオドを打つ」という意味だ。

「女性に身の回りで困っていることなどを聞き取り調査して、これはニーズがあると思いました。生理のケアはこれまで自己責任とされてきましたが、企業の社会的な責任にしていきたい。この事業を第一弾にして、女性のヘルスケア全般のプラットフォームになるように事業を展開していきたいです」

大学院で研究しているのは、スマートシティー(ICTを活用して利便性・快適性を高める都市)やモビリティー(移動)。この分野で起業するなら、利用者がアプリを入れるニーズを感じるサービスだ、と考えていた。

「東大で都市工学を専攻した卒業生は、官庁や不動産会社、コンサルティング会社に就職する人が多く、起業家はあまりいません。女性教員も少なく、そもそも女性のモビリティーをテーマにした研究が少ない。生理はセンシティブなテーマですし、研究の対象になってきませんでした。このテーマに関心を持つ研究者や起業家が、一人でも出てくることに意義があると思っています」

父親の仕事の関係で、小中学校は米国で過ごした。中3で帰国し、帰国生が多い東京学芸大学附属国際中等教育学校に入った。日本語はあまり話せなかった。国連などの国際機関に興味があり、高校時代に仙台市で開かれた国連防災世界会議を見に行った。日本での街づくりや復興に海外の人たちが関心を持っていることを知ると同時に、日本の街づくりの現場や専門家の中に英語を話せる日本人が少ないように感じたため、日本で都市計画の仕事に携わるのが面白そうだと思った。

街づくりのためには法律を知る必要があると考え、慶應義塾大学法学部にFIT入試(AO入試)で入った。千葉県君津市の地方創生に関わり、その体験を生かして1年の時にビジネス学生団体KBC(Keio Business Community)主催のビジネスコンテストに出場。卵かけご飯を展開するビジネスプランを発表し、優勝した。

KBCは湘南藤沢キャンパス(SFC)にしかなかったので、日吉キャンパスにKBC日吉をつくった。秋に開かれる慶應連合三田会大会(同窓会)で、大手企業と協力してビジネスコンテストを開催した。

都市計画法の授業が理工学部にあったため、理工学部のある矢上キャンパスまで週2回、聞きに行った。担当教員から「東大で都市計画法のいい授業が行われている」と聞き、「このまま不動産会社や官庁に入るのは違うのではないか。都市工学への思考を深めたい」と東大大学院に進学した。

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