東大生と起業

大学3年で起業、挫折を経て急成長 「自分で作った膨大なユーザーに影響を与えられる」

2022.06.29

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中村 正史
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中央官庁や大企業にキャリアを託してきた東大生の志向が変わり、起業したり、スタートアップ企業に入ったりすることが一つの選択肢になっています。東大の起業家教育や起業支援を担ってきた各務茂夫・大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)は「優秀な東大生は意識してスタートアップに行っている」と言います(記事はこちら)。東大発スタートアップの起業家たちを取材すると、日本の変化が見えてきます。(写真は、アイデミーの石川聡彦・代表取締役CEO)

入学時の夢は起業か学校の先生

アイデミーは、石川聡彦(あきひこ)・代表取締役CEO(29)が東大工学部3年だった2014年に設立した。名前と名字の頭文字「AI」に「アカデミー」をくっつけたのが社名の由来だ。主に大手企業向けに、AI(人工知能)を中心としたDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成や、組織づくりの支援をしている。同社のサービスを活用している企業は、メーカー、商社、証券、損保など100社以上にのぼる。

企業はITシステムを外注に頼るところが少なくない。それを変え、デジタル人材を社内で育成してDXの内製化を図ろうというのが、同社の事業である。そのために社員の教育研修用のeラーニングを提供し、企業内で新規のビジネスが出てくるのをサポートすることもある。

「21歳で起業して、今年で9年目になります。最初の3年間は、今のUber Eatsのような弁当のデリバリーサービスや、飲食店のポイントカードをまとめるアプリ開発など、試行錯誤しましたが、うまくいかず、絶望感に見舞われた時期もありました。2017年に現在のものに近いサービスを展開し始めてから支持されるようになり、事業が軌道に乗りました。この5年間で大きく変化したと感じています」

17年12月の社員数は5人だったが、現在、54人にまで増えた。アルバイトを含めると93人。18年から2年間は東大本郷キャンパスにあるインキュベーション施設に入居していたが、事業の拡大で手狭になって、20年に現在の千代田区神田小川町に移った。

横浜市出身。子どもの頃は児童プロダクションに入り、子役の歌舞伎役者を務めた。横浜市にあるサレジオ学院中学高校に通い、1浪して東大文三に入った。

「中高時代にネットで商品を売って楽しかった経験があり、当時からビジネスに憧れていました。大学に入った時の将来の夢は二つあり、起業することと学校の先生になることでした」

入学してすぐにビジネスコンテストを運営するサークル「KING」に入った。10歳ほど上の先輩にバイオベンチャーのユーグレナの出雲充CEOがおり、ビジネスコンテストで話す機会があった。刺激を受け、起業が身近になるきっかけになった。

2年の時に出場したビジネスコンテストで、SNSのユーザーに好みの商品を推奨するアプリを提案し、優勝した。学校の先生より起業の夢の方が大きくなり、3年からの進路振り分けでは文三から進むことが多い文学部ではなく、工学部に変えた。

「学校の先生が影響を与え得るのはクラスの数十人ですが、ビジネスは自分で作り出したユーザーで何万人、場合によっては何億人にも影響を与えることができます。起業するならばテクノロジーの分野の方が成功する確率が高いと思い、理系に変えました」

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