令和の学校選び 10の視点
進学校VS大学付属校、どっちを選ぶ!?〈前編〉 付属校は内部進学率の「内容」吟味して
2022.07.04

「第3次中学受験ブーム」とも言われる令和の時代。我が子の学校はどのような視点で選べばいいのでしょうか。中学受験専門塾・スタジオキャンパス、国語専科・博耕房の矢野耕平代表が解説します。(写真は青山学院横浜英和中の入試会場に入る受験生や保護者ら=2020年2月1日、横浜市南区、木下こゆる撮影)
家庭の意向次第で受験候補校は案外しぼれる
東京だけでも数多くの私立中高一貫校がある。
その数は実に187校。選択肢がこんなにあるとわが子の受験候補校として一体どこを考えればよいのだろうと不安を抱く中学受験生保護者がいるかもしれない。
しかし、先日公開した2本の記事(「男女別学VS共学 どっちに進学する!?〈前編〉」 「男女別学VS共学 どっちに進学する!?〈後編〉」)では、男女別学と共学のそれぞれの特徴について言及したが、どちらを選ぶかで受験候補校はしぼられる。さらに、今回テーマとなる「進学校」か「大学付属校」のどちらを選ぶかという視点を加えるならば、受験候補校となる学校数は一気に少なくなるものだ。
さて、ここでいう「進学校」とは系列の大学が存在せず、大学受験を前提にした中高一貫校のことであり、「大学付属校」とは系列の大学に内部推薦で進学する生徒が多い中高一貫校を指すこととする。
先述した「男女別学/共学」とは異なり、スパッと「進学校/大学付属校」に二分することは難しい。系列の大学がありながら、その大学にはほとんど進学せず、他大学受験をする生徒が大半という、「進学校」扱いすべきところもあれば、生徒たちに系列大学への推薦権を保持したまま、他大学を受験することを積極的に働きかけるところなど、その形態はさまざまだからだ。
進学校、大学付属校、どちらかにひかれるよくある理由
わが子は果たして「進学校」に行くべきなのか、それとも「大学付属校」を選択すべきなのか。
「進学校派」は次のような理由をよく挙げる。「大学受験という目標があるからこそ、中高6年間学業に専心できる。また、将来やりたいことも定まっていないのに、どの大学に進むのかを中学入学時点で決めるのは早すぎる」
一方、「大学付属校派」からよく耳にするのは、「大学受験勉強で膨大な時間を割かれることなく、わが子には部活動や課外活動など、中高6年間を存分に謳歌(おうか)してほしい。また、付属校は『学園色』の強いところが多く、卒業生などのネットワークを将来的に活用することだってできる」。
わたしから言わせると、どちらのことばもそれなりの説得力があり、それぞれの内容に同意できる。
つまり、「進学校」「大学付属校」の選択はご家庭の価値観、意向次第である。
ただし、「進学校派」にも「大学付属校」を見学したり調べたりしてほしいし、「大学付属校派」も「進学校」にも目を向けてほしいと思う。全く考えていなかった学校で思いもよらぬ長所が見いだせるかもしれないし、何よりも受験候補校の「良いところ」と「そうでないところ」を相対的に見ることが大切だとわたしは考えるからだ。
それでは、今回は主として大学付属校について取り上げていきたい。
主要な大学付属校の系列大学進学率
首都圏にある主要な大学付属校と系列大学への進学率(内部進学率)を下の表にまとめてみた。

大学付属校といえども、それぞれの内部進学率は大きく異なることが分かるだろう。
また、系列の大学に「(成績不振で)上がれない」生徒が多いのか、あるいは、「(あえて)上がらない」生徒が多いのか。この点も気になるところだ。たとえば、学習院はほぼ全員が系列大学(学習院大)の推薦権を持てるという。しかしながら、半数近くの生徒が学習院以外の大学をあえて受験している。
わが子の志望校を選定する際は、上記の内部進学率の数の「内容」について吟味しておきたいところである。