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「宇宙ゴミ」回収用カメラを開発、持続可能な宇宙開発に貢献 東京理科大学木村真一研究室
2022.07.13

◇木村真一教授/東京理科大学理工学部電気電子情報工学科
持続可能な宇宙開発に向けて大きな問題となっているのが、軌道上にあるスペースデブリ(宇宙ゴミ)だ。そのデブリを回収するための宇宙カメラの研究が東京理科大で進む。写真はカメラが撮影した画像から宇宙ゴミの位置を正確に把握するためのプログラムを開発する様子。写真中央が木村真一教授(写真/朝日新聞出版・戸嶋日菜乃)
役目を終えたり、故障したりした人工衛星や、ロケットの打ち上げ時に生じた部品の破片など、軌道上にある不要な人工物体がスペースデブリだ。その数は10センチ以上のもので約2万個、1センチ以上で50万~70万個、1ミリ以上となると1億個を超えるといわれる。デブリは秒速7、8キロの速さで地球を周回している。運用中の人工衛星などに衝突すると壊滅的な被害をもたらしかねない。加えて、デブリ同士が衝突することで、その数が自己増殖的に増えてしまう厄介な存在だ。木村真一教授がこう指摘する。
「宇宙旅行など有人の宇宙開発が進展するなか、スペースデブリは人の安全に直結する問題になってきています。デブリをこれ以上増やさない取り組みだけでは不十分で、いまあるデブリを積極的に回収していく必要があるのです」
人工衛星からロボットを放出してデブリを回収するなどいくつかの方法が考えられている。ただ、ロボットを使うにしても、デブリの位置や回転しているかなどの状態を把握する「目」と、デブリに近づくための「脳」が必要になる。「ゴミ」の回収だけにコストはかけられない。木村教授の研究室では、この難題を解決する宇宙カメラの研究開発を進めている。
木村研究室は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」や、小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されたカメラを開発してきた実績をもつ。はやぶさ2は小惑星「リュウグウ」から試料を持ち帰ることに成功した。いま、デブリ回収用カメラの開発にあたって重視しているのが、「ある程度故障しても稼働し続けることができるカメラ」だ。宇宙空間では放射線や温度差などがデバイス(機器)に影響を及ぼす。絶対に故障しないデバイスをつくろうと思えば、それだけコストがかかってしまう。大学・大学院で薬学を学び、生き物の適応性について研究した木村教授は発想を転換することにした。
「生き物はケガをしても動き続けることができます。これと同じように、ソフトウェアを工夫し、デバイスが故障しても稼働し続けることができる宇宙カメラを開発しようと考えました」
すでに、デブリの除去に取り組むアストロスケールの技術実証衛星や、川崎重工業が開発したデブリ捕獲用の超小型実証衛星に搭載されているほか、「デブリの軌道を認識・予測し、人工衛星が自動追尾できるインテリジェントカメラ」の開発をスイスの大学と連携して進める。
