「夢中」を学びに
「夢中」が脳を育てる一番の原動力 年齢に応じた働きかけを 脳医学者・瀧靖之さん
2022.07.07

間もなく夏休み。今年こそ子どもに多くの経験を積ませようと、計画を練る家庭も多いのではないでしょうか。子どもの「夢中」や「好き」の伸ばし方を考えます。脳医学者として16万人の脳画像を見てきたという瀧靖之さんは「脳の仕組みを知った上で、年齢に応じた働きかけをすることが有効」と話しています。
(たき・やすゆき)1970年生まれ。東北大加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1児の父。著書に「16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える『賢い子』に育てる究極のコツ」「アウトドア育脳のすすめ」などがある。
2歳から伸びる知的好奇心 オススメは図鑑や虫捕り網
夢中になる体験や知的好奇心は、脳を育てる一番の原動力です。これまでの研究でも、知的好奇心のレベルが高いほど、専門的知識の習得や集中力、情報処理能力が高まるとされています。
脳科学の観点からいえば、感情をつかさどる扁桃体と、記憶をつかさどる海馬は近いところにあり、感情と記憶は、頭の中でよくつながります。好きなことに夢中になって、楽しいからもっと知りたくなる。自分なりに考えたり調べたりすることは、学習の自己主体性を高め、さらには学業成績にもつながります。
子どもの知的好奇心を育てるには、脳の仕組みを知った上で、年齢に応じた働きかけをすることが有効です。
子どもの脳は、全体としては後頭葉から頭頂葉、前頭前野と、後ろから前へ発達することが分かっています。生後すぐには、視覚に関わる領域の後頭葉が大きく発達します。同じころに音を聞く能力に関わる領域である側頭葉が発達します。次に発達するのが頭頂葉です。
0~1歳は赤ちゃんの体にたくさん触れ、話しかけるなど、愛着の形成がとても重要です。たくさんの愛情を感じた子どもは、安心して外の世界に興味を持ち、羽ばたいていきます。
生後半年から2歳ごろには、母語の発達のピークを迎えます。読み聞かせが重要になるのも、この時期です。
2歳ごろになると、自分と他人の区別がつくようになり、外の世界に興味を持ち始めます。知的好奇心がぐんと伸びるので、虫捕り網を持って昆虫採集に出かけたり、天体望遠鏡を覗(のぞ)かせたりして、どんどん経験を重ねましょう。
好奇心が芽生える時期に、世界を広げてくれるのが図鑑です。図鑑なら、家にいながら、外国の動物にも、宇宙の星にも触れることができます。人は、見たり触れあったりする機会が多いほど、その対象に興味を持ったり好きになったりします。これを「単純接触効果」といいます。繰り返し読むことができる図鑑は、その点でも優れています。図鑑の知識と、リアルをつなげる体験を繰り返すことで、子どもの好奇心は刺激されていきます。