都立高入試スピーキングの不可解

スピーキングテスト、問題点次々 採点ミスがあっても「闇の中」? 不受験者の点数、他人の結果から算出…

2022.07.05

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石田 かおる
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山下 知子
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今年11月27日に初めて実施される予定の、東京都立高校入試の英語スピーキングテスト「ESAT-J」。その申し込みが7月7日から始まります。テストの実施方法はすでに明らかになっていますが、「採点内容の開示はしない」「受験しなかった場合は他人の点数を参考に自分の点数が決まる」など、従来の「入試の原則」を大きく踏み外していることが分かってくるにつれて保護者、教員の間で困惑が広がっています。申し込み開始を直前に控え、実際にどんな問題が起きているのか、実施への疑問の声はどのようなものなのか。まとめました。(写真は、東京都庁)

採点内容の開示不可 もし採点ミスがあったら?

今春、都立高入試の採点結果をめぐって都教育委員会が対応を迫られる事態が起きている。

「合否判定ミスはどのようにしてわかったのですか?」

「賠償はどうなるのでしょうか?」

「だれが処分されるのですか?」……

今年5月、今春の都立高入試で、生徒3人について合否判定ミスがあったことが発覚した。本来、合格だった生徒が不合格にされていたのだ。6月の東京都議会文教委員会では、ミスの原因や責任の所在、再発防止について、都教委に対して厳しい追及がなされた。

都立高入試では2014年、大量の採点ミスが起きた。都教委は、このとき検討した再発防止策(①マークシート方式の導入、②合格発表日以降、受験生から申し出があれば、採点済みの答案の写しの交付、③複数の者による点検の徹底)などを行ってきた――と説明。さらに過去10年間で、生徒本人の開示請求により合否判定の誤りが判明したケースがあったことも明らかになった。

都教委は「受験者の人生を左右することにつながり、あってはならないこと」「事態の重大さをしっかりと受け止めて、今後このような事態が起こることのないようありとあらゆる防止策を講じ、実行していく」と謝罪の言葉を口にした。

ところが、いま都立高入試で進行しているのは、この言葉とは裏腹な事態だ。今の中学3年から入試に新たに加わる英語スピーキングテスト「ESAT-J」では、採点の根拠となる情報の開示請求が生徒側からあっても、都教委は「示すのはスコアが全て。それ以上の対応はしない」としているのだ。

しかし採点内容の開示は、受験した生徒と保護者を守る最後のとりでだ。6月の委員会で質疑をした戸谷英津子都議(共産)は言う。

「開示請求は入試の公正な手続きとして大事。スピーキングテストで対応しないとなると、入試の成績の一部に生徒が確認できない部分ができることになります。それでは、今回の合否判定ミスの教訓や再発防止策は生かせません。都立高入試そのものを揺るがす大問題です」

ESAT-Jは、都教委が事業主体となり、ベネッセコーポレーション(岡山市)と「共同実施」する。専用のタブレット端末を使い、生徒がタブレットに吹き込んだ解答をフィリピンで採点する。

成績はIRTと呼ばれる統計処理をしたスコアで示され、それを6段階の「グレード」に分け、20点満点で換算する。その得点を学力検査(700点満点)と調査書の点数(300点満点)に加点し、計1020点満点で合否が判断される。

入試でのESAT-J結果の扱い
入試でのESAT-J結果の扱い
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