算数・数学 学びのヒント

間違いの直し方には二つの形がある 自分で見つけて自分で正そう

2022.07.08

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。短絡的な受験勉強の弊害か、そんな「暗記数学」の迷路に入り込み、分数やパーセント(%)の本質を理解しないまま大学生になる若者がいます。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の魅力を教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、中学・高校受験期の子どもにこそ理解してほしい算数・数学のツボを解説します。

疑う気持ち強く持ち 間違い見つける

人間は神様でないので間違いをします。そこで、間違いを正すことが必須となりますが、大きく分けると二つの形があります。一つは、リポートの提出前や試験の最中のように、間違いがあるか無いかが分からない状態で、間違いを見つけて正す場合です。もう一つは、問題集で自習していて答え合わせをしたときや、あるいは試験の答案が返ってきたときのように、既に間違いがあることが分かっている状態で、それを正す場合です。それぞれについて考えてみましょう。

よく雑誌などに2枚の絵があって「左右の絵には違いが5カ所あります。それを見つけてください」という問題があります。5カ所という具体的な数字まで挙げられていても、意外と全部は見つけられないものです。まして、その設問が「左右の絵には違う点があるかも知れません。もしあれば、それを指摘してください」となると、難易度は一気にアップします。

実際、答案でいくつかの間違いに気づかなかった学生にいろいろ質問したことがあります。「この答案には間違いがあるかも知れませんよ」とだけ伝えた場合、自分で書いた文章を疑うことなく読んでしまうようで、なかなか間違いに気づかないものです。その一方で、私が「この答案には二つの間違いがありますよ」と伝えると、多くは自力で間違いを見つけ出します。

間違いがあるか無いかが分からない状態で見直しをする場合に大切なことの一つに、「疑う気持ちを強く持って文章を見直す」ことがあります。もう一つは、「少し時間を置いてから見直す方が見つけやすい」ということです。試験のように時間が限られている場合には難しいのですが、慣れた思考回路をいったん切って一から組み立てるようにすると、多くのチェックが頭の中で行われます。慣れた道を進むより慣れない道を進む方が、辺りをキョロキョロしながら歩くことと同じでしょう。

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