東大生と起業

不動産業界をデータとテクノロジーで変革、「30歳から先の世の中へのインパクトを考え、起業」

2022.07.20

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中村 正史
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中央官庁や大企業にキャリアを託してきた東大生の志向が変わり、起業したり、スタートアップ企業に入ったりすることが、一つの選択肢になっています。東大の起業家教育や起業支援を担ってきた各務茂夫・大学院工学系研究科教授(産学協創推進本部副本部長)は「優秀な東大生は意識してスタートアップに行っている」と言います(記事はこちら)。東大発スタートアップの起業家たちを取材すると、日本の変化が見えてきます。(写真は、estieの平井瑛・代表取締役CEO〈中央〉をはさみ、左が岩成達哉・取締役CTO〈最高技術責任者〉、右が束原悠吾取締役。岩成さんはIndeed Japan、束原さんは三菱地所から移った。3人とも同世代だ=同社提供)

業界大手が活用する情報データベースに成長

商業用不動産のデータプラットフォームを提供するestie(エスティ)は、今年1月、ベンチャーキャピタル(VC)3社から約10億円の資金を調達した。東大発スタートアップを支援する株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)も含まれ、これまでで最大規模の調達額になる。3社のうち新規に加わったVCの次のコメントがestieの特徴をよく表している。

「巨大な不動産業界の商流に入り込み、アナログで非効率・不透明であった不動産業務を独自のデータとアルゴリズムによって解決」「日本の不動産業界の進化に寄与する高い成長性を感じる」

平井瑛・代表取締役CEO(31)は、2019年4月に事業を開始してからの3年余りを「私たちのビジョンに共感してもらえるお客様が増えました。今回の資金調達は大きなステップで、順調に成長できていると思います」と語る。

平井さんは東大経済学部を卒業後、三菱地所に5年勤めた。海外の不動産投資を担当し、米国では商業用不動産テック(テクノロジーを用いて、不動産業界の課題を解決する)のスタートアップがたくさんあるのに、日本にはほとんどないことから、同社を辞めて起業する道を選んだ。

日本の不動産市場は世界最大級で、オフィスビルなど商業用不動産の市場規模は約10兆円といわれる。しかし、オフィスビルは住宅と違い、網羅的なデータベースが存在しないことからIT会社が入っていけず、しかも情報がデジタル化されていないために最新情報のアップデートまでに時間がかかるという課題があった。データとテクノロジーの力で、物件を持つオーナー、入居するテナント企業、仲介会社の3者の最適の意思決定をサポートするのがestieの事業である。

仕事に取り組むestieの社員たち=同社提供
仕事に取り組むestieの社員たち=同社提供

不動産データ分析基盤「estie pro」は、不動産ディベロッパーや仲介会社などから提供された全国8万件以上の情報を扱い、千代田区や中央区、港区などの都心5区ではオフィスビルの90%以上の情報を網羅する、日本最大級の商業用不動産の情報データベースだ。物件情報や空き室情報、賃料、入居テナントなど、オフィス賃貸や売買に必要な情報がそろっている。

サービスをリニューアルした20年7月以降、東急不動産、野村不動産などの大手不動産ディベロッパーや、J-REIT(不動産投資信託)の運用会社、仲介会社などが導入する例が増え、月次の売り上げは月平均約15%増で伸びてきた。

また、賃貸オフィスマッチングサービス「estie」では、オフィスを探すテナント企業がエリア、面積、坪単価などの条件を入力すれば、AIが希望に合う物件を探し出し、仲介会社から物件提案が届く。

平井さんはこう話す。

「事業の主軸はestie proです。この不動産データを集める難度が高く、他社には容易ではないと思います。集めたデータをお客様の役に立つように、サービスの内容や質を充実させてきました。その結果、導入社数が増え、業界大手が活用してくれるようになったのが、この間の大きな変化です。次の不動産業界をこうしていきたいという私たちの思いを大手のお客様にも理解してもらえたのだと思います。大きな業界の既存の事業者に支持してもらえるのが一番大事なことです」

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