親と子のコミュニケーション術

「サーッ!」「ンガー!」身体能力を引き上げる掛け声、スポーツオノマトペとは

2022.08.02

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ゆきどっぐ
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「ニャー」といいながら前屈をすると、体が柔らかくなる。そんな不思議な力を発揮するオノマトペ。「オノマトペはスポーツだけでなく、料理や掃除、勉強に至るまで、効果がある」と語るオノマトペ研究家の藤野良孝さんに、運動能力の関係性や勉強などで生かせるオノマトペを教えていただきました。(写真はオノマトペの効果を実践する小学校での授業の様子=藤野良孝さん提供)

Yoshitaka_Fujino

話を聞いた人

藤野 良孝さん

オノマトペ研究家

(ふじの・よしたか)朝日大学保健医療学部教授、早稲田大学オープンカレッジ講師。国立大学法人総合研究大学院大学文化科学研究科修了後、早稲田大学ことばの科学研究所研究員、スポーツ言語学会理事などを経て現職。オノマトペを活用した幼児・児童教育、スポーツ、ボイストレーニング、コミュニケーション法、コーチングなどを実践的に研究する。著書に『逆上がりだってできる! 魔法のことばオノマトペ』(青春出版社)など。

オノマトペで飛躍する身体能力

――藤野さんが研究されているオノマトペですが、具体的にはどのような効果があるんですか?

スポーツ選手はさまざまなオノマトペを使って、競技に挑んでいます。例えば、元プロ卓球選手の水谷隼さんは「ジョーッ!」、陸上ハンマー投げの室伏広治さんは「ンガー!」。こうしたオノマトペの掛け声を一般の人でも試してみると、例えばゴルフでは平均10ヤード以上も飛距離に違いが生まれたんです(個人差あり)。

私は、言葉の本質とでもいうのでしょうか、こういったプリミティブ(原始的)でオノマトペ的な声には、人がもつ潜在性を開花させるような神秘を感じています。このような身体に作用する声と、スポーツで使用される擬音語・擬態語を総称した言葉を「スポーツオノマトぺ」と名付け、どのような効果があるのかを幅広く研究しているんです。

――オノマトペを使うと、なぜ体に影響が出るのでしょうか。

例えば、卓球の福原愛さんは現役時代に「サーッ!」という声を「リラックスのために使っていた」と述べています。この掛け声は、高音で声が大きいため、そうとうお腹に空気を入れないと出ない音だと推察されます。つまり深呼吸をしているのと近い効果があって、リラックスできたのだと考えられます。

同じように卓球選手の伊藤美誠さんや石川佳純さん、平野美宇さんも「サーッ」という高音で大きい声を出している場面をしばしば見かけます。声を出したときの気迫から、自分を鼓舞し覚醒や興奮を引き出しているように感じます。また声を出すことによってアドレナリンが分泌され、心拍数、血圧を上げ、適度な緊張、集中モードに入ることで、より高い力を発揮することができるようになると考えられます。

オノマトペ_1

「あいうえお」の母音を発声するとわかるのですが、「あ」と「お」は外へエネルギーが向かい、「い」と「う」は内に向かってエネルギーが働きます。瓶の固いふたを開ける時、「にゃーっ」と言うよりも、「ぐーっ」という音を出した方が、力が入りやすいでしょう。

このように体にとって最適なオノマトペを選び使うことで、人間の力をより大きく引き出すことができるんです。

ちなみに、母音の「え」が音末にくるオノマトペは、スポーツではあまり見かけないんです。不思議ですね。

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