アントレで変わる教育
株を発行、商品企画から決算報告も 起業家教育に取り組む青梅市立霞台小学校の模擬株式会社「霞カンパニー」
2022.07.29

東京都の青梅市立霞台小学校では、模擬株式会社「霞(かすみ)カンパニー」を設立し、地元・青梅をPRする商品の開発・販売に取り組む起業家教育を実践してきました。資金調達から利益の使い道まで、子どもたち自身で決めるという霞カンパニー。活動について、佐藤広明校長に話を聞きました。(写真は、商品評価会で、タオルのデザインについてプレゼンテーションする子どもたち=2021年、青梅市立霞台小学校提供)
(さとう・ひろあき)1960年生まれ。公立中学校で理科を教えた後、小学校に異動。前任校の青梅市立第三小学校では「青三カンパニー」、前々任校の杉並区立杉並第四小学校では「杉四カンパニー」を設立し、地元と協働で街のセールスに取り組んだ。2018年、小学校での起業家教育の推進で、中小企業庁の「創業機運醸成賞」受賞。
5年生全員が社員の「霞カンパニー」を設立
――模擬株式会社「霞カンパニー」とはどのような取り組みなのでしょうか?
「青梅を世界にPR」を合言葉に、模擬的な企業を設立し、地元・青梅をPRする商品を開発・販売しています。2020年度は(株)サムライTシャツさんと協働で「青梅の魅力Tシャツ」を、21年度はホットマン(株)さんと協働で「青梅の魅力タオル2021」を作りました。いずれも青梅に本社がある企業です。カリキュラムとしては、5年生の総合的な学習の時間を使い、1年間を通して活動します。主体は子どもたち。社長・副社長に選ばれた児童を中心に、約60人いる5年生全員が役割分担をして活動に関わっています。

――霞カンパニーを通して起業家教育に取り組む背景や目的をお聞かせください。
青梅で育ち学ぶ子どもたちに、郷土のことを知り、誇りを持ち、魅力を語れるようになってほしい。そして、ゆくゆくは青梅で活躍する人材になってほしい。そのためには何ができるだろうか……というのが出発点です。
国語や算数といった机上の教科学習では学べないことを学ぶため、地域とつながる体験学習はとても大切です。職場体験などを「させてもらう」よりも、子どもたちが主体となって地域の人と一緒に活動したり、協力してものを作ったりするほうが意欲的に取り組めるのではないか、地域の良さをより体感できるのではないかと考え、青梅をPRする商品を開発するというコンセプトに行きつきました。青梅市教育委員会では、郷土について学ぶ「青梅学」を小中学校で推進しており、その取り組みとも連動できるだろうと考えました。
模擬株式会社を設立して行う起業家教育は、これまでの勤務 校でも実践してきましたが、目的は起業家を育てることではありません。ものを作って売って利益を得て社会をまわしていく、というものづくりやビジネスの仕組みを学び、チャレンジ精神、主体性・積極性、創造性、協働・実行力といった社会で生きていくために必要な力を身につけるための手段として、起業家教育は有効だと考えています。
