子どもをはぐくむ

学校の開門時間前、安心して過ごせる「朝の子どもの居場所」をつくる 神奈川・大磯町の取り組みとは

2022.08.10

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山下 知子
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小学校の前で、校門が開くのを待つ子どもたちが議論を呼んでいます。そんな中、神奈川県大磯町では6年前から、「朝の子どもの居場所づくり事業」を展開しています。子どもたちは登校開始時間までの間、隣接する学童保育の施設で自由に過ごしながら、学校が始まるのを待っています。朝の子どもの居場所は、どうあるべきなのでしょうか。(写真は、始業前に学童保育所で遊んで過ごす子どもたち=2022年6月15日、神奈川県大磯町の国府学童保育所)

みんな並んで「行ってきます」

6月中旬の午前7時半すぎ、大磯町立国府小学校の隣にある国府学童保育所には、10人の子どもの姿があった。子どもたちはスタッフと一緒に太極拳をしたり、ボードゲームを出して遊んだり。一角には本やマンガ雑誌も置いてあり、一心不乱に読む男の子もいた。

同級生とシルバニアファミリーで遊んでいた小学1年の女の子は、両親がカメラマンとして働く。「いろんなところに撮影に行くから、忙しいの。動画も撮るんだよ」と言いながら、両親の仕事について嬉しそうに話した。

隣の机でレゴブロックを出して遊んでいた小学3年の男の子は、「お父さんは仕事場が遠くて、お母さんは病院で働いていて、朝は早いんだ」と記者に説明してくれた。「ここではたくさん遊べるから嬉しい。学校に行くより、このまま遊んでいたい!」

午前8時10分、スタッフが子どもたちに呼びかけた。

「学校に行く時間ですよ」

子どもたちが片付けを始め、手を洗ったり、帽子を探したり。「いってらっしゃい」の声を背に建物の外で列を作った子どもたちは、大きな声で「行ってきます」と言って、学校に向かって歩き出した。

登校時間になり、学童の建物を出る子どもたち=2022年6月15日、神奈川県大磯町の国府学童保育所
登校時間になり、学童の建物を出る子どもたち=2022年6月15日、神奈川県大磯町の国府学童保育所

「子どもが1人にならずにすむ」

大磯町では2016年1月から、町立2小学校で、「朝の子どもの居場所」事業を展開する。土日祝日や長期休みを除き、学校がある日の午前7時15分から登校開始時間まで、学童保育所で実施する。国府学童保育所は、社会福祉法人が運営を委託されており、「朝の子どもの居場所」事業もその社福法人がにない、学童指導員らが見守りスタッフを務める。

町立小学校に通う児童であれば、親の就労状況にかかわらず利用できる。登録保険料として児童1人あたり300円が必要だが、利用料はなし。町が年約300万円の予算をつける。

町によると、利用する子どもは大磯小で1日平均19人、国府小で同8人。21年度は、延べ人数で、大磯小で2047人、国府小で1284人が利用した。保護者からは「仕事の出勤が早く、子どもが自宅で1人にならずにすむので安心」といった声が寄せられているという。

「朝の子どもの居場所」事業のきっかけは、神奈川県が若手職員の提案事業の一つとして始めたモデル事業だ。15年度に大磯町と海老名市で行った。利用した保護者71人に聞いたところ、朝の居場所が「必要」と答えたのは70.4%。朝の居場所事業に期待することとして、「出勤時間に合わせた預かり時間の延長」が26.0%、「急な利用時にも対応してもらえる体制」が30.7%で、自由記述欄には「土日や長期休業中も実施してほしい」といった声があった。

大磯町子育て支援課の栁田美千代課長によると、町内の小学校では2、3人の児童が開門を待っている姿があったという。栁田課長は「連れてくる時に、見守りスタッフと言葉を交わせるなど、保護者にとっては地域とのつながりが得られる場にもなっている。地域の協力なしには成立しない事業です」。

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