休学する東大生

第2回 スペインでのインターンのため休学、「今までとは違い、自分の意志で動いてみたかった」

2022.08.10

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中村 正史
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休学する東大生が急増しています。東大が保存している2009年以降のデータでは、学部生の休学者は年を追って増え、2022年の休学者(5月1日現在)は09年に比べて85%も増えていることがわかりました。なぜでしょうか。東大生に聞くと、「休学して自分のやりたいことをする人が増えている」と言います。かつては4年でストレートに卒業して、官僚や有名企業を目指した東大生の意識が大きく変化していることがわかります。(写真は、スペインに到着した佐藤美乃梨さん=バルセロナ市内で、本人提供)

就活が動き出し、自分を見つめ直した

8月3日夜、工学部社会基盤学科4年の佐藤美乃梨(みのり)さん(21)は、成田空港からスペインのバルセロナ空港に向けて出発した。大学を休学し、現地の自動車関連企業でインターンシップをするためだ。当面、来年3月までだが、延長する可能性もある。

休学を考え始めたのは、3年になって理科二類から工学部社会基盤学科に進み、4カ月ほど経った昨年の夏休みだった。

「周りの学生が企業のインターンに参加して就活を始めたり、大学院進学を考えたりしていました。私は学科の勉強にいま一つなじめず、かといって就活しようという気も起きませんでした。それでこれまでの自分を振り返り、自己分析しようと思いました。気づいたのは、これまでの私はすべて周りと同じレールに乗っていたということです。自分の実力による大きな成功体験もなく、自分のせいで多大な損害が出たような失敗体験もありません。これまで何を軸に生きてきたのか、わからなくなりました」

小学校から中学・高校まで白百合学園に通い、東大に現役で合格した。両親からはずっと「偏差値の高い大学に行ってほしい」と望まれていた。高校時代は塾漬けの生活で、高3の時には英語は平岡塾、化学はSEG、生物は駿台予備学校、数学は遠山数理教育研究会と、週4日塾に通った。

大学に入ってからは、教育系ボランティア団体、学生団体、社会現場を見に行く自主ゼミ、若者の投票を呼びかける一般社団法人、環境問題に取り組むNGOなど、様々な活動に参加した。だが、これまでの自分を振り返って感じたのは、こんな思いだった。

「私って自分の意志で動いたことがなかったなあと思いました。東大を受験したのも、自分が行きたい理由があったからではなく、塾に通っていた周りの人が東大を目指していたからです。大学に入って様々な活動をしたのも、多くは知人に誘われたり、社会的に価値があるとされていたりしたからで、自分の心の本当の思いではないという違和感がずっとありました」

就活も大学院も今の自分の進路ではない。思い浮かんだのは、「一回休学して、周りに影響されずに自分で動いてみよう」ということだった。4年になる2022年度から休学することを決めたのは、昨年8月末。とはいえ、休学して何をするかは決めていなかった。

地域おこしに関わろうかなどと思っていたが、日本の理工系学生を対象にEU加盟国にある企業で1年間、インターンや語学研修を行うプログラム「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ」が参加者を募っていることを知った。その中から学部生でも応募できるスペインでのインターンに応募し、採用された。現地の会社では、車が衝突した時の衝撃を調べるテストに裏方で携わる。

今年4月から休学期間が始まると、語学学校に通い、インターンに向けて準備を始めた。住む部屋もネットで探して決めた。語学学校の授業料や渡航費は主催する日欧産業協力センターが負担し、派遣先の滞在費も毎月、一定額が支給されるため、家賃や生活費を含めてギリギリ何とかなりそうだ。

両親に休学してスペインでインターンをすることを話したら、費用の自己負担がなく、目的が決まっているからと快諾してくれた。

スペインに出発する1週間前の佐藤さん=東大・本郷キャンパス
スペインに出発する1週間前の佐藤さん=東大・本郷キャンパス
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