一色清の「このニュースって何?」

2021年度の食料自給率、38%に微増 → 食料自給率ってどのくらいがいいの?

2022.08.19

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真:高い自給率を維持する日本のコメ。一方で消費は減り続けている)

カロリーベースと生産額ベース

農林水産省は、2021年度の日本の食料自給率がカロリーベースで38%だったと発表しました。前年度の37%から1ポイント上がりました。

ロシアによるウクライナ侵攻や世界的な天候不順などにより、一部の国では食料不足が深刻になっており、国内でも食料品の値段が上がっています。そうしたニュースを見聞きしたり値上がりを実感したりした人からは、「食料を輸入に頼っていると、いざというときに危ない」という声を聞くようになりました。つまり、食料自給率が1ポイント上がったくらいで喜んでいてはだめで、もっと高めないといけないという声です。そうした議論を理解するために、まず食料自給率とはどういうものかを知り、どのくらいの水準が望ましいのかについて考えてみましょう。

食料自給率とは、国内で供給される食料のうちどれだけを国内で生産しているかを示す指標です。つまり「国内で生産される食料」÷「国内で供給される食料」です。ただ、食料といってもそれを数字で表さないといけません。数字の表し方に2種類あります。食料を人が活動していくのに必要な熱量(カロリー)に換算してはじき出すカロリーベースと、食料を金額に換算してはじき出す生産額ベースです。

カロリーベースの場合、重さのわりにカロリーの高い米、小麦、油類などの影響が大きくなります。生産額ベースの場合、金額の高い畜産品や野菜や魚介類の影響が大きくなります。日本の場合、総じて国産品のほうが輸入品より値段が高いので、生産額ベースはカロリーベースよりも食料自給率が高くなります。21年度の生産額ベースの自給率は63%(前年比4ポイント減)でした。4ポイントも減ったのは、輸入した食料が値上がりした一方、国内産のコメや野菜が値下がりしたためです。政府は、実際に生きていくための食料を考えるにはカロリーベースを目安にしたほうがいいという考え方で、食料自給率という場合にはカロリーベースの数字を使うのが一般的になっています。

日本のカロリーベースの食料自給率は、1965年度には73%でしたが、その後ほぼ一貫して下がり、2010年度に40%を切りました。それ以降は37~39%の間で推移しています。21年度は1ポイント上がりましたが、これは外食需要の回復でコメの消費が増えたほか、小麦の自給率が上がったことなどが影響したものです。反転する大きな理由があったわけではなく、依然横ばいで推移していると冷静にみるのが適当です。

食料自給率が下がり続けた大きな理由は「食の洋風化」です。日本の主食であるコメを食べる量が減り、代わってパンや肉を食べる量が増えました。コメは高関税に守られて自給率がほぼ100%です。一方、外国で大規模に生産されている小麦、大豆、トウモロコシなどは、ほとんどが輸入です。パンの主な原料は小麦なので、パンの消費量が増えると小麦の輸入量が増えることにつながります。牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品などは国内で生産されているものも多いのですが、牛や豚や鶏の主なエサとなるトウモロコシはほぼすべてが輸入されています。こうした畜産関係の食料もエサを含んだ自給率となるととても低くなります。つまり、自給率の高いコメなどが減り、自給率の低いパンや肉などが増えたため、全体に減ってきたのです。

「食の洋風化」にともなって、国内生産を守るための輸入障壁は低くなっていきました。かつては輸入禁止や高関税という高い壁を設けていたのですが、工業製品を外国に売るために貿易立国を掲げていた日本は、貿易を自由化しようという世界の流れに乗らざるを得なくなりました。また、安い輸入品を求める消費者の声も強まり、1980~90年代に牛肉、果物、コメなどで次々に関税を下げたり輸入禁止措置をなくしたりしていきました。

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