スクールリポート

高校募集停止は「探究活動の充実のため」 豊島岡女子・竹鼻志乃校長インタビュー(上)

2022.08.24

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石渡真由美
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理・工学部25.9%、医学部16.5%(2022年度合格者割合)と、近年、理系学部への進学実績を伸ばしている豊島岡女子学園中学高校(東京・東池袋)。東大をはじめとする難関大学への進学実績が高いことから、さぞかし受験対策に力を入れていると思いきや、「大学受験のための特別なカリキュラムはありません。探究活動やモノづくりを通じて、自分が興味を持ったことを深掘りした経験が大きいのではないでしょうか」と竹鼻志乃校長。豊島岡生がどんな6年間を過ごすか、同校OGでもある竹鼻校長に話をうかがいました。2回にわけて掲載します。

竹鼻志乃さん3
竹鼻志乃さん3

竹鼻志乃さん

豊島岡女子学園中学高校 校長

(たけはな・しの)1966年生まれ、埼玉県育ち。豊島岡女子学園高から筑波大学第二学群生物学類へ。味の素の中央研究所(当時)に勤務後、93年に理科教員として同校に着任。2013年から現職。同校初の卒業生校長。

やりたいことは何でも手を挙げる

――近年、大学進学実績が飛躍的に伸びていますね。特に理・工学部、医学部といった理系に進む生徒が多いように感じますが、何か特別な指導をされているのでしょうか?

よく同じような質問を受けますが、大学受験のために何か特別な対策はしていません。そもそも入学した段階では、自分が将来どんな道へ進みたいか分からない生徒がほとんどだと思います。何かを経験したり、学んだりしていくうちに、「ああ、これをもっと知りたいな、深掘りしたいな」と思うわけで、早くから進路を決めておく必要はないと思います。ですから、できるだけ選択肢を広げるという意味で、いろいろなことが経験できるチャンスを用意しています。

近年、特に力を入れているのが探究活動です。日常で感じる疑問や課題、世の中の様々な問題など、課題の大きさはそれぞれですが、何事も自分事として捉えることが重要だと思います。そうした課題の中で「自分だったらどうするか」という視点から、「自分のみならず、社会がよりよくなるには」という視点を持って考えを深めていく人になってほしいのです。

本校は「志力(しりょく)を持って未来を創(つく)る女性」の育成をスクールミッションとして掲げています。「志力」とは、自らの役割を自覚し、問題解決に向けて主体的に取り組み実現する力を指します。探究的な活動は「志力」の育成の流れと同じであるため、積極的に取り入れています。

竹鼻志乃校長
竹鼻志乃校長

――具体的にはどんなことをするのでしょうか?

本格的な探究活動を行うのは高1と高2ですが、中学の段階から土台を築いていきます。ただ、中1、2の段階で全生徒が自ら課題を設定し探究活動を進めていくのはまだ難しいので、やりたい人が手を挙げる希望制にしています。ところがふたを開けてみると、毎年3分の2の生徒が参加しているんですよ。中学生の希望者を対象にした「探究Basic」では、各教科の教員たちが提供する課題について、3〜4人のグループで取り組みます。面白いのがその課題。「食料自給率100%を目指したお弁当を作ろう」「ねこふんじゃった変奏曲を作ろう」など、実に40項目もあるのです。

――希望者が参加できるとのことですが、学年によって差は出るのでしょうか?

やはり、中1だと掘り下げがまだ甘いところはあります。でも、それでいいんです。この段階では、興味を持ってやってみることが大切だからです。活動内容は、年1回、秋に開催される「Academic Day」で発表します。先輩たちの発表を聞いて、「ああ、もっとこうすればよかったな」と悔しがったり、「こんなアイデアを考えられるなんてすごいな」と刺激を受けたりしながら、翌年、もう一度チャレンジする生徒もいます。このプログラムは中学生を対象にしていますが、やりたい人は誰でも、何度でも参加できます。昨年は高3生も参加していました。このように、本校では「やりたいことに手を挙げる」空気が流れています。だから、生徒たちはとても忙しいんです。学校説明会では「うちは忙しいのが好きな子に向いている学校です」とお伝えしていますね。

Academic Dayでは学年に関係なく、研究成果を発表する=豊島岡女子学園中高提供
Academic Dayでは学年に関係なく、研究成果を発表する=豊島岡女子学園中高提供
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