都立高入試スピーキングの不可解
スピーキングテストに保護者の怒り(上) 「説明ないままこっそり進めないで」「個人情報の強制登録だ」
2022.08.31

今年11月27日、都立高入試で初めてとなる、英語スピーキングテスト「ESAT-J」が実施される予定です。7月7日から申し込みが開始されましたが、実施3カ月を前に、中学生の子を持つ保護者らが中止を求める抗議行動に踏み出しました。かねてさまざまな問題が指摘されてきましたが、保護者らは何を問題視しているのでしょうか。取材しました。(写真は、ESAT-Jの中止を求める保護者ら=2022年8月18日、東京都庁前)
「ずさん」 都庁前で訴え
8月18日の夕刻、「都立高校入試の英語スピーキングテスト導入に怒ってます!」「都立高入試への英語スピーキングテストの導入中止を!」と書いたプラカードを手に、中学生の保護者らが東京都庁の前でスタンディングを行った。
「ほんとうは、私たち、こんな所に立って訴えたりしたくない。でも、ここまでしないと東京都教育委員会に私たちの声は届かないのかなと、意を決しました。少し検索していただければ、このスピーキングテストがいかにずさんか、すぐ分かると思います」
主催した「都立高校入試英語スピーキングテストに反対する保護者の会」のメンバーのひとりは道行く人にそう訴えた。
「子どもの気持ちを考えただけで、本当にもう涙が出てきます……。こんなテスト、やってほしくありません。ここにいるお母さん、みんな同じ気持ちだと思います」
涙で言葉に詰まる保護者もいた。
この日、人生で初めてスタンディングに参加したという保護者もいた。ここまで、保護者らを追い込む「都立高入試に導入予定の英語スピーキングテスト」とは何なのか──。
テストの名称は「ESAT-J」(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)で、東京都が事業主体となり民間事業者ベネッセコーポレーション(岡山市)と共同実施する。テストはタブレット端末を使い、音声を吹き込んで解答する。今年11月27日に実施予定で、7月に申し込みが始まった。都内の公立中学3年生全員が受験し、フィリピンで約8万人分を採点。1月中旬に成績票が渡され、20点満点で調査書に記載し、都立高入試に加算される。

かねて「スピーキングテストの採点は、採点者によるぶれが生じる。8万人分の採点を短期間で公平に行うことは不可能ではないか」との懸念の声が、英語教員らから上がってきた。都議会でも質疑されたが、都教委は、フィリピンでの採点者の人数をはじめとする採点態勢は「事業者の企業秘密に関わる」として明らかにしていない。
加えて、成績票で生徒に伝えられるのはスコアのみで、何で失点したかがわからない。都立高入試では、生徒から請求があった場合、入試の得点と採点済みの答案を開示するが、ESAT-Jは開示しない。このため「採点ミスがあっても闇にほうむられてしまう」と問題視する声も上がってきた。