都立高入試スピーキングの不可解
スピーキングテストに保護者の怒り(上) 「説明ないままこっそり進めないで」「個人情報の強制登録だ」
2022.08.31

いまだに多い、未決定な部分
保護者のスタンディングに先立ち、8月18日午後は、都議会議事堂内で「都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の見直しを求める市民大集会」が開かれた。オンラインも含めて、教員や保護者、都議ら約200人が参加した。
保護者からは、中学3年生と大学生の子を持つ岡田尚子さんが登壇。ESAT-Jについて「保護者と中学生が怒っているポイント」として、以下の5点を挙げた。
① 説明会がない。プリントとHPだけ……
② 個人情報の責任は?
③ 「20点問題」に子どもたちは怒っている!!
④ スピーキングって機械に話しかけること? GTECに似ている?
⑤ 「そもそも大学入試で却下されたのに!」問題
① 説明会がない。プリントとHPだけ……
「説明会がない」について、岡田さんは次のように話した。
「5月に進路説明会がありましたが、先生もスピーキングテストについて『詳しいことは分からない』と困っていました。しかし、その後、保護者への正式な説明会は一度もないままプリントが配られるだけで、7月の申し込みに入りました」
前出の「保護者の会」のメンバーも登壇し、次のように話した。
「入試制度のこれほど大きな変更にもかかわらず、都教委から中学生の保護者に対してのきちんとした説明が全くありません。プリントを配るだけで、学校の先生もよくわからない状況で、こっそり実施に向け進めていることに怒りを覚えます」
中学3年を担任する教員からも学校現場の状況が伝えられた。
「いま学校現場は都から次々と送られてくるESAT-Jの訂正や追加決定事項の把握に追われています。1本のメールやただのプリントで送られてきます。多くの学校では、すでに1回目の進路説明会や保護者会などを終えています。そこに、一度保護者に伝えたことを差し替えるように新たな情報が次々送られ、それを再び周知する。教員、保護者、そしてなによりも生徒たちが振り回されています」
さらに教員は次のように訴えた。
「不明な点を問い合わせても、業者・区・都とたらい回しにされ、なかなか回答が得られません。(実施まであと3カ月だというのに) いまだにESAT-Jは未決定な部分、不明瞭な部分が多い。このようなお粗末で穴だらけの制度を、子どもの人生に大きな影響を与える高校入試に導入して良いのでしょうか」
② 個人情報の責任は?
7月7日にESAT-Jの申し込みが始まり、専用サイトへの生徒の顔写真なども含む個人情報の登録もスタートした。保護者らの驚きと戸惑いを呼んだのが、都立高入試への申し込みであるにもかかわらず、ベネッセのサイトに個人情報を登録することになっている点だ。ベネッセは、過去に大量の個人情報を流出させたことがあり、中学生のなかにも被害者は多い。
岡田さんは言う。
「ベネッセに個人情報を流出された経験があり、登録が心配だという人が周りにたくさんいます。先生から申し込みを催促され、悩んでいる人もいます。でも、入試のため登録をせざるをえません」
個人情報の登録には、保護者の同意が必須となっている。
「保護者の同意を得ず、申し込み手続きが完了できなかった場合、生徒がこうむった損害について、都の教育委員会と業者は責任を負わないと書かれています。なぜ都教委は責任を持たないのでしょうか?」(岡田さん)
保護者の中には「個人情報を登録したくない」と教員に相談したところ、「ゼロ点になるかもしれない」と言われ、都教委に問い合わせたものの明確な回答を得られなかった人もいる。親が同意しても、子どもが怖がり登録できないケースもある。保護者の取材を通して、そうした声も聞かれた。
岡田さんは取材に対してこう語った。
「これでは、入試をたてにした、個人情報の強制登録ですよね」
