子どもの体力

広がる子どものスポーツ格差 家庭の収入で体力二極化 背景は? 保護者の関わり方は? 専門家に聞く

2022.09.02

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岩波 精
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収入が少ない家庭の子ほど、体力や運動能力が低い傾向がある――そんな「子どものスポーツ格差」が指摘されています。学力の低い子は体力・運動能力も低い傾向があり、学年が上がるにつれて格差が拡大していくことも、明らかになりました。コロナ禍の影響も深刻です。筑波大体育系の清水紀宏教授(スポーツ経営学)に格差の実態や解決策を聞きました。

清水紀宏さん

話を聞いた人

清水紀宏さん

筑波大体育系教授

(しみず・のりひろ 1961年生まれ。2001年から現職。一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会副会長。編著書に「子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う」(大修館書店)、「よくわかるスポーツマネジメント」(ミネルヴァ書房)など。)

家庭の経済力が運動能力や学校生活にも影響

――子どものスポーツ格差とはどういう問題ですか。

家庭の経済格差によって子どもたちの体力が二極化しているという問題です。経済的に豊かな家庭の子のほうが、低収入の家庭の子よりも体力テストの総合点が高いのです(下のグラフ)。特に、世帯収入400万円未満の子どもの体力の低さは深刻です。

グラフ・世帯収入と体力

私は子どものスポーツ格差について次のように定義しています。

「子どもが生まれ育つ家庭や地域、学校などの条件が原因となって生じる①スポーツ機会へのアクセス②運動習慣③運動への意欲④スポーツ活動によって獲得される体力や運動能力等の諸能力、にかかわる許容できない不当で不平等な差異のこと」

これは、子ども自身が選択・操作できず、自らの努力や能力によらない不条理な差で、人的災害です。

こうした格差の実態を明らかにするため、2018年に岐阜県多治見市の協力を得て実証研究を行い、公立の幼稚園と保育園、小中学校の子どもたちの体力データと、保護者用アンケート、小5~中3の子ども向けアンケートをひもづけて検証しました。

その結果、学力が低い子どもは体力・運動能力も低い傾向があり、この傾向は学年が進むにつれて顕著になることが明らかになりました。また、スポーツが不得意な子や、体力が相対的に低い子どもたちは、学校生活への満足度が低く、休み時間はひとりぼっちで過ごす傾向が強いことも分かりました。家庭の経済力は体力や運動能力だけでなく、学校生活全般の豊かさにも大きく影響していたのです。

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